スプリントフォーラム

先日の滋賀での大会の後に開催されたスプリントフォーラム。
簡単に趣旨を説明すれば、世界的には魅せる種目として観客にもわかりやすいルートチョイスを課題にしたコースが展開されるオリエンテーリングのスプリント・ディスタンス。さらに男女混合のミックスリレーやマススタートのノックアウトスプリントなど新たなスタイルも開発されている。世界選手権などの国際大会でもその存在感は高まり、重要な種目になっている。その一方で、日本のスプリントはルート選択はあまりなく、一定のルートを正しくたどれるかどうかを問う少し違った形で展開されつつあった。そこでスプリントの定義を今一度見直し、最近の世界のトレンドやスプリントで速くなるために必要なトレーニングは何かを紹介、各地でスプリントに対する正しい取り組みを展開してもらうための場として日本オリエンテーリング協会主催のフォーラムが設けられた。
僕もパネリストとしてお招き頂き出席したが、きつきつの時間割でゆっくりディスカッションする時間がなかったのは残念。特に、僕ら世代のスプリントのスペシャリストで、来シーズンのスプリント強化スタッフになった(なる?)加藤氏のプレゼンテーションは、彼の専門分野である運動生理学的な話を含めて大変興味深いものだったので、ぜひ皆さんにも全部聴いていただきたかった。
加藤氏のプレゼンテーションの中で面白いとおもったのは、フィジカルトレーニングの質と量の関係について。日本人はどのスポーツに限らずトレーニングに量を求めがちだが、果たしてそれは正しいのだろうかという視点。最近の研究では質より量のグループと量より質のグループとでトレーニング効果を比較したところ、同じ結果が得られたというデータもあるとのこと。
ただ質はあっても量が極端に少なくては、例えば月100km未満しか走ってないなど、効果を得られない可能性はあるのかも。また高い負荷のトレーニングを継続するのは心理的には辛い面もある。が、ある程度のレベルを維持していれば、質と量のどちらが多い少ない関係なくやった分だけ同じ効果が得られるとすれば、そのときの体調や環境に合わせた最適なトレーニングボリュームを探っていくことは、アスリートに求められる能力の1つではないだろうか。
加藤氏によれば、ただのジョギングは何の意味もなく、どうしてもジョグするなら最後に流しを5本、それで劇的に変わるという。こんな話を聞くと、なんだかまだまだ速くなれる気がしてくる。
技術トレーニングについてもいろいろと話してくれたけれど、僕が一番、あっと思ったのは、後でも触れるルートチョイス判断をする練習のときの話。地図とコースを用意して練習するのはよい、ただ同じところを1人でやっていると面白くなくなってくる。そこで彼は、飽きてきたら仲間に通行禁止の道路を設定してもらうのも手、という話をした。
そう、仲間!こんなのはありきたりな話かもしれないが、山奥で1人で練習していると、だんだん仲間の存在を忘れてきてしまう。つくばや流山に住んでいる頃はいろんな人とトレーニングし、高め合ってきた。トレーニングを継続する上でも工夫する上でも、一緒にがんばっている仲間の存在は大きく、頼りになる。より高い所を目指すならば、同じ目標を持った仲間をぜひ作ってほしい。
スプリントフォーラムや加藤氏による個人レッスンは今後も企画されるよう。今回出席できなかった人は次の機会にぜひ。ディスカッションパート担当だった僕の内容はたいした量ではなかったけれど、選手として肌で感じたことを紹介したので、せっかくだからこの場に少しまとめておこうと思う。
①フィジカルについて
 世界のスプリントで活躍するためには3000m9分を切ることが1つの基準になりつつあるが、実際のスプリントレースは12-13分。日本選手は14分近くかかることも。そのことを考えると3000mよりは5000m、あるいは12分完走のタイム・距離を出すことを目標に据えた方がよいのではないかと思う。実際、トラックでは3000m9分ちかいタイムを出せる選手でも、レースでは終盤までナビゲーションへの集中が続かずスピードを活かし切れないという話もある。
 ただ第一段階として3000m9分を切るスピードを身につける、というのは必要なことだろう。また中・高校生の段階ではまだ3000mで十分だとも思う。
②テクニックについて
 公園や広場を利用した整置や地図の持ち替え練習などの基礎練習はもちろんやった上で、できるだけ市街地での勘を高めていく必要もある。個人練習するだけならグーグルマップや住宅地図を利用すればよいだろう。Open Orienteering Mapの仕様が変わってしまい導入が面倒になったが一応Open Street Mapで簡易O-Mapを作ることも可能→ Make orienteering maps for o-training
 単調なコースしか組めない場所でも今年の世界選手権のように一時的にバリアを設置することでルートチョイスを課題にしたコースを組むことができる。練習では擬似的にバリアや通行禁止の道路を設定し、そこを通れない場合を想定した練習をすることでスプリント特有の判断力を問う練習になる。小さな大会でも練習でも、よりスプリントらしいものを用意する工夫が必要。
 技術練習はすぐに効果が出るものではないので、続ける根気と少しずつ改良していく工夫もアスリートに求められる要素だろう。
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▲世界選手権にて。レースのためのフェンスを設置することによって7-8-9のルートチョイスにバリエーションが生まれる。日本ではフェンスを設置するだけも大変だろうが、テープを張る、立入禁止エリアを増やし役員が立つ、などで同じような効果は得られる。
③心構えについて
 メンタルというよりは選手としての心構えについて。
 スプリントのための遠征はコストパフォーマンスが悪いというので敬遠されがちだが、スプリントで結果を残したいのであればそれは自分への投資として賭けるべき。またそれに伴う資金の工面も、本来は組織が行うべきだがそれを言っていても始まらないので、個人の努力としても行うべき。
 競技者としての誇りをもち、オリエンテーリング関係者だけではなく多くの人に応援してもらえるような活動、振る舞いをどんどんやっていく必要がある。また、選手を支えるサポーター(コーチや仲間、運営者)も、時には選手へ厳しい眼差しを向け、また選手への敬意が育まれるような演出もお願いしたい。


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