第22回日本山岳耐久レース ハセツネ2014

ハセツネのことを知ったのは2003年、当時クラブの先輩だった高橋善徳さんが出場し入賞、たくさんの賞品をもらってきて、それをクラブの後輩である僕たちに配ってくれたときだった。最近は長谷川恒夫カップを略してハセツネというのが一般的だけど、当時は山岳耐久レース、山耐と呼ぶほうが一般的だったように思う。
今でこそ100マイルレースも当たり前の世の中だが、当時はそんなのは本当に一部の奇人変人的な人がやるもので(失礼)、当時まだフルマラソンも満足に走り切れなかった僕にとって、山の中を70キロ以上走るというのは信じがたい話であった。ただ「小泉も出てみたらいいよ」という善徳さんの言葉が、いつかは出なきゃいけないという意味に変わりずっと心に刺さっていた。その後なかなかタイミングが合わずに来ていたが、今年はタイミング良く(いや、結構強行出場だった気もするが)一念発起でエントリーしたのだった。
だけど正直なところそこまでしっかりとレースに合わせて準備ができた訳ではない。AsOCから1か月後のレースで長距離に慣れる練習はほとんどできず。スピードトレーニングはしっかりとやったけれど、やはり距離に不安がある身としては(ロゲイニングでも4時間過ぎたあたりでフラフラし始める)それを自信に変えることはできなかった。
試走に行くチャンスもなかったが、醍醐丸までと大岳から先は行ったことがあったのでなんとかなろうと楽観的に。三頭山がきついという話をよく聞くので、同じようなプロフィールを持った近所の山を夏の間に何度か走りシミュレーション。カザフスタンから帰ってきて新調したいくつかのギアに慣れるためにもナイトランの練習を2回ほど。それぞれ4時間程度。これでうまくいけば楽なもんだが、やっぱりそこまで甘くはなかったか。弁明をし始めればキリがないのでそんなところで。
目標は9-10時間。過去の知人たちの記録を見ているとそのくらいは行ける(そのくらいは出せないといけない)んじゃないかという程度のあまり根拠のない理由。2003年に善徳さんが出した9時間9分を超えられればハッピーだなぁ。でもよく考えたら当時の彼より僕は10歳以上も年上だ。新進気鋭の若手有望選手と勝負をするかのような気持ちになって不思議だった。僕の距離適性を考えればどんなにゆっくり入っても途中で辛い時間帯がやってくるのは間違いないので、第一関門浅間峠まではやや速めのペースで入り、第二関門月夜見までが耐える区間、それ以降は未知の世界で出たとこ勝負という展開で勝負。
レース直前の体調は咳が残ったがあとはほぼ万全。数日前からパスタなど炭水化物多めになるようには心がけた。前夜は近くのホテルを取る。思ったより興奮があったが移動の疲れもあってかぐっすり眠られた。
会場では受付だけ済まして駐車場に停めた車で準備、スタート直前に再び会場へ行った。会場に行けば知り合いにあってお話しすることもあるだろうけど、そんな会話に使うエネルギーさえ惜しみたい気分であった。スタートの位置取りが重要と聞いていたが、そもそもどんな風にスタートしていくのか分からない。何人かの知人を見つけて前へ前へと連れて行ってもらう。
スタート直後はペースが速い。だけどめちゃくちゃ速いってわけでもなく、ちょっとずつ前へ出られた。今熊神社からは周りのペースがさらに落ちる。今のペースがよいのかよく分からない。自分が走りやすいペースより1割ちょっと落とした感じで走ってみようと思う。円井さんがいる。彼の目標は8時間20分だと知っていた。彼より前に出てしまって大丈夫だろうかと思うが、調子のよいうちに稼いでおきたいと思い自分のペースで行く。
浅間峠までは走りやすかったがずいぶん長く感じた。特に初めての区間はずいぶん長く感じてしまう。浅間峠を2時間47分。このペースなら9時間ちょっとで行けるはずで、体にもまだ余裕があったので思ったよりよい記録が出せるかもなんて淡い期待を抱いたのも束の間、3時間を過ぎたあたりでガクッときて両足がぴくぴくと痙攣し始める。まぁここまでが僕の得意の時間帯でこの先が苦手な時間帯。予想通りではあったけれど悲しい。
丸山から西口峠あたりでどんどんと追い抜かれていく。三頭山の登り始めまでは回復区間だと我慢してゆっくり進む。ここまでに回復はしたかもしれないが、三頭山の登りは結局ペースを上げられず遅速区間はさらに伸びてしまう。激登りが遅いのも分かっていたことで、ここも割り切ってライトの準備をしつつ、歩きながら登る。途中で優勝した金髪の女子選手に抜かれる。ありゃりゃ。
三頭山を登り切ったころにはなんとなく体調が戻る。下りでペースを上げられる。テクニカルな部分では前の選手と差を詰め、譲ってもらうこともあれば、さらに速い選手に抜かれることもあった。月夜見の関門で水を給水。フラスクにジェルを詰めたりして合計で6分ちょっと滞留。身体が一気に冷えており、動き始めると風にさらされ全身が震える。
すっかり脂肪燃焼に切り替わりエネルギー切れの心配はなくなった気はするが筋肉へのダメージは大きく、結局御前山の登りもまったくペースを上げられず。後から再び女性の声。今度は日本語のようだ。ここは踏ん張りたい。御前山の下りは得意な路面でペースアップ。しかし女性の息遣いは離れたと思ったらまた聞こえてきて離せずじまい。大岳の登りでこらえきれず道を譲る。あれが福田さんだと知っていればもうちょっと気合が入ったかもしれんのに。残念。
この先はよく知っている区間。長尾平の第三関門を抜け元気も出てくる。だけど頑張って走っているつもりがペースは上がらず。金比羅尾根で3人に抜かれる。いつもはあっという間に終わる金比羅尾根がずいぶん長く感じる。だけどもうすぐもうすぐという気持ちもあってペースを落とすことはなく、淡々と走り切った。
タイムは9時間47分。これまで走った友人知人たちのタイムと比べれば可もなく不可もないタイムであったが、しかし完走もできないんじゃないかと思っていた僕にとっては上出来なタイムだと思う。何事も1回目からベストパフォーマンスが出せるような天才肌ではないのだし。フィニッシュ直後はもういいや、これで十分と思っていたけど、今となってはあそこでああしていればもっとよいタイムが出せるのではないかと考えてしまっている自分がちょっと信じられない。
レース前の準備
・朝食はホテルの朝食を普通に
・スタート2時間前におにぎり1個とウィダーイン1個
・スタート1時間前にウィダーイン1個
・スタート30分前にパワーバー1本
バックパックほか
・MOUNTAIN HARD WEAR フリューイッドレースベストパック
 600mlのフラスクと500mlのソフトフラスク装着
・Inov-8 Race Ultra 1 SS14
 500mlのフラスク2個装着
・サバイバルシート 1枚
・マイクロレーサー(コンパス) 1個
・コース地図 1枚
ウェア
・noname O-TOPとTerminator
・on・yo・neインナー 
・CW-X 七分丈タイツ
・noname キャンプジャケット(アウター)
 使わず
シューズ
・Inov8 X-TALON 190
 ちょっと衝撃が強すぎたか筋肉へのダメージが大きかった。もうワンランクソフトなシューズの方がよいかも。
靴下
・どこかで頂いたアルパカ靴下
テープ
・ニューハレ Vテープ両ひざ
・ニューハレ Xテープ足首
・キネシオテープ ハム、ふくらはぎ
ヘッドライト
・ジェントス ヘッドウォーズ888
ハンドライト
・ジェントスSG-325 閃
 下りと霧の中で利用
飲み物 約150Kcal
・OS-1 1.6L(500~600mlのフラスクに3本)
 15分ごとに1口、30分ごとに2口、1時間ごとにぐびぐび。
 月夜見までに1.2L程度消費。
・月夜見で1.3Lの水補給。
 最後は400mlくらいは余っていたか。
食べ物
・ショッツ 13袋→0袋 約1500Kcal
 ソフトフラスクに8袋分入れ、水200mlで約半分に割る
 30分に1回程度補給。三頭山下りで飲みきる。
 月夜見で5袋補充し、水を250ml入れてもらい割る。
 その後も30分に1回程度補給。長尾平で飲みきる。
・パワージェル 4袋→3袋 約120kcal
 1袋を日の出山頂で摂取。
・スポーツようかん 5本→3本 約240kcal
 2時間、6時間(月夜見)で1本ずつ摂取
・パワーバー 2本→1本 約200kcal
 4時間(三頭山登り始め)で1本捕食
・アミノバイタル 2本→0本
  2回摂取 4時間 7時間?で1袋ずつ
・ZEN 15粒→6粒
  3回摂取。1時間 3時間 6時間?で3粒ずつ
・大島の塩(1g) 4袋→2袋
 月夜見で1袋、御前山で1袋
  
・大福 1個→1個
 帰宅後に妻のおやつに
約4200Kcalの補給。アンビット2で取ったデータでは約5700Kcal消費している。消費量は正しくない可能性もあるがおよそ1500Kcalは体の蓄えを利用したものを考えられる。もうちょっとしっかり食べたほうがよかったか。3~6時間くらいは胃がジェルを受け付けにくく苦行だった。6時間以降は受け入れる。もはや気持ち悪い感覚もなくなっていたのかも。
レース後のダメージ
膝まわり、特に大腿部に強い筋肉痛が残る。ふくらはぎも痙攣の影響で固まっている。肩も固い。足裏含めた皮膚には問題なし。レース後は味覚が乏しかったが24時間程度で回復、36時間後には食欲も復活。
sその他
アンビット2で取ったGPSデータを見ると距離がずいぶん短く出ている。平面距離を測っているからだろうか。ペースもこの値が基になっていると考えるとキロ9分しか出ていないと思っていた区間も実際はもうちょっと速いペースで走れていたことになる。ペース配分と栄養補給を改善するだけでももっとよいタイムが出せそうだ。
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