ANP記念大会 アフタートーク

さて、すっかり時間が経ってしまったが先日の朝霧ナヴィゲーションパーク(ANP)記念大会についてはスプリントの記事でも触れたとおり。1日目のスプリントが終わった後は2日目ロングの運営者となり、慌ただしく動いた。ん?、というほど慌ただしくもなかったか。これもサポートしてくれた朝霧野外活動センターや静岡県オリエンテーリング協会、静岡OLCの皆さん、そしてコントローラー様のおかげです。
ここで大会の苦労話を語る気はさらさらなく、今回のレースで試みた3つのことについて触れておきたいと思う。
1つは地図について。ロングディスタンスレースなので上級クラスや若いクラスは1:15000の縮尺で、それ以外のくらいは1:10000の縮尺で、というのは通常通りであったが、調査を進めるうちにマッパーの西村君から等高線間隔を5mから2.5mに変更してはどうかという提案があった。僕は事前にテレイン全体を見ているので、それではちょっと表現が厳しいところもあるのではないかと不安になるところもあったが、彼はうまく作図をするというので、その提案を後押しした。これについては賛否両論あろうけど、趣旨としては西村君がfaceboookに載せたコメントやそれに対する鹿島田さんのコメントそのままであるのでそちらを見ていただきたい。
ちなみに僕が関わるレースではなるべくウォーミングアップマップを用意するようにしている。これも世界で戦う上でウォーミングアップマップを有効に活用する術を身に付けてもらいたいという願いからである。
2つめはスタートリストについて。今回は最上位クラスのME/WEクラスにおいてシード制を利用しなかった。全日本選手権ではないローカル大会だからというのもあったが、なにより一般的なシード制に対して本当に公平性が保たれるのかという疑問もあったからだ。
その一般的なシード制というのは、ランキング上位者や日本代表選手などは一定の間隔を開けてスタートさせるというものである。この場合はたしかに上位選手同士は干渉し合わない。優勝候補のA選手とやはり有力なB選手が途中で一緒になり、ペースアップ、結局彼らが1-2フィニッシュ、というのは一見すると不公平ではある。しかし一般的なシード制を取った場合に有力選手の間に挟まれた選手たちが有利になるということはないだろうか?むしろ実力では確実に劣るC選手がA選手と一緒になることで実力以上の結果を残せることのほうが不公平にも思える。そもそもオリエンテーリングは自分でナビゲーションするスポーツであり、故意の追走は禁止行為ではあるけれど、しかしそうは言ってもたまたま前に選手がいれば、その影響は少なからず受けてしまうものである。
ところで国際レースでは選手登録の際にearly、middle、lateの枠を選択することになっている。例えば1チーム3人しか出られないレースの場合は、それぞれの枠に1人ずつ、5人の場合は1-2-2か2-1-2か2-2-1か、3枠ができるだけ均一になるように割り当てる。運営側は、この3枠の中でランダムなスタート順を振りスタートリストを作成する。選手のタイプによって例外はあるが、オリエンテーリングはやはり後半にスタートしたほうが若干の有利さがあるのは暗黙の了解。それは同タイム同着の場合は先にスタートした選手の名前を上に書くというルールが物語っているだろう。なので有力選手は後半スタートを選びたがるし(何度も言うがそうじゃない選手もいる)、チーム内での決定権も強いのでそれが実行に移されることが多く、有力選手が終盤に集中する。予選決勝方式の決勝の場合は、当然有力選手が最後に固まる。有力選手がフィニッシュするころには、めまぐるしくトップタイムが入れ替わるエキサイティングな展開が見られる。
そして世界の舞台では自分より速いか、最低でも自分と同じくらいのレベルの選手と常に接近し勝負をしなくてはならない。日本では3分前の選手に追いついても(追いつかれても)、すぐにいなくなるので気にしなくてもよいだろう。しかし国際レースではそうはいかない。なかなか離れてくれない、お互いつるむつもりはないのに最後まで一緒に走り続ける、ということもままある。そもそも3分も時間差があるのだから、他の選手に会ってしまうようなレースをしているうちはまだまだである。
日本のレースでも上位選手を離すのではなく、あえてくっつけることによって、同じ実力の選手同士が競い合う、よりシビアなレース環境を作るべきではないだろうか。と、ここまで偉そうに書いてきたが、この話はカザフスタンで尾崎選手との会話の中で出てきたことである。なるほど、これまでなんとなく慣例でやってきたシード制だけど、それもそうだな、と。さすがスウェーデンで1年過ごしただけのことはある。実力を上げたこと以上に、ワールドスタンダードな視点を持って日本のオリエンテーリングを変えていける選手になってきたなと思った。そんなこともあり、今回は独自基準でe、m、lの割り振りを行い、その中でランダムにスタートリストを作成してみた。
ちなみにこのスタートリストはもう1つの効果をもたらした。それは撤収時間が早まったということにある。有力選手が後半にスタートするということは、言い方は悪いが有力ではない選手は前半にスタートするので、彼らは競技時間いっぱいかかってしまったとしてもまだお昼すぎ。後半の選手はきっちり優勝設定時間+数分のタイムで帰ってきてくれるのでフィニッシュ閉鎖時刻を過ぎても帰ってこないなんていう事態にはなりにくい。このスタートリストは演出面でも安全面でもよい効果があるように感じる。
3つめは開催形態について。これは僕が推進したわけではないけれど。今回、朝霧野活動センターの皆さんは大いにご協力いただいた。その理由は同センターがANP構想の企画者であり、本大会の共催者であったから。
通常ならオリエンテーリング愛好者が大会を開催する場合、これらの施設を”貸していただく”立場であり、施設の通常の利用範囲の中で運営のやりくりをするものだけど、今回は積極的に彼らも運営に携わっていただき、施設や資材の利用だけではなく、当日のスタッフにも加わっていただいた。オリエンテーリングの人間の側からすれば、野外活動のプロたちと一緒にやれるということは万が一のときに大変心強いし、また施設での長年の活動実績もあるので地元との交渉も安心していられるというメリットがある。彼らにしたら、新しい野外活動の形態を知るチャンスであり、なにより施設の有効活用を促進するという使命を達成することもできる。
世界に挑むための環境(意識)づくりと、よりエキサイティングなチャンス、そして持続的に楽しむための解決策。今後もオリエンテーリングを追及していきたい。
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ウイニングタイムは過去の富士山麓での大会を参考に割り出した。男子は全年齢の感覚をだいたい掴んできた。しかし女子は大会によってばらつきもあり、まだ難しい。やはり母数が増えないと。男女とも20Aクラスのペースが想定より速いのは嬉しい傾向だろう。


ANP記念大会 アフタートーク」への2件のフィードバック

  1. 西村徳真(NishiPRO)

    シード制に対する考え方は大変参考になりました。「普段の大会ではシード制は必要ないけれども、チャンピオンを決める大会においては重要」というのが自分の認識でした。つまり、優勝候補となる選手だけは公平性を出来るだけ担保すべし、と。
    でも、主流の考えはそうじゃないってことですかね。

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  2. KOI

    西村君、コメントありがとう、そして調査お疲れ様でした。
    少なくとも現行の日本のシード制度を海外のレースで見たことは、僕はありません。まぁ競技の特性上、本当にまったく公平なスタートリストというのは作れないしので、どんな制度でも、どんな局面でも、パフォーマンスを出せることが実力のある選手、ということでしょう。
    演出のことも考えれば強豪選手を最後に固めるのは今後主流になっていくのではないかな。それを決めるためのランキングシステムの整備が課題となるはずで、その意味もあってIOFはランキングシステムを改編したのかもしれません。これはただの個人的な憶測guessですが。

    返信

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