WOC2018 in Latvija ⑤ リレー

続いてレースレポート。まずは最初に出場したリレーについて。

これまで出た大会ではいつも最後に実施されていたフォレストの国別対抗リレー。ここ数年は最後にロングを行い、その前にリレーを行うことが増えつつあるようで(全部走る選手への体力面での配慮と思われる)、僕としては個人戦より前にリレーを走るというのは初めての経験となった。

リレーまで日本チームはあまりよい結果を残せていない。若い選手が多いためかチームの雰囲気こそ悪くはないが、このままいつもの結果に落ち着いてしまってはいかんなぁという気持ちがあった。せめて昨年を上回る結果を残して少しは上向きになって大会を終え、来年につなぎたい。

かと言ってこんな直前にできることはあまりない。できるだけ冷静に、自分たちのパフォーマンスをしっかり発揮することに集中するしかない。ミドルが終わったあと、おそらくこれまでなら戦力分析や細かなシミュレーションなどを行っただろうと思うが、あまりよくない結果でそれをしても気持ちが沈むか無理に力を出そうとするだけだろうと思い、他の2人にも調子を確認するぐらいで、できるだけ気楽に走れるよう心がけてはいた。

個人的には今回のWOC最初のレースということでしっかりと手続きを行い、最後まで走り切りよいイメージを持って次のロングを迎えたい。また初めてWOCでアンカーを務めるということで決着をつけねばならない場面でどういう展開があるかをいくつか想定した。相手がいない1人レース状態、カナダや中国などライバル国との競争、強い国との競り合いの可能性もゼロではない。パターン振りがある場面とそうでないと分かっている場面の切り替えなどをイメージ。

レースは女子から行われるが地図やコースの情報が漏れないよう男子も早めに隔離エリアに入らなくてはいけない。隔離エリアではスマホなどの情報通信機器の利用が禁止されており、レース展開は会場から流れて来るアナウンスからしかわからない。しかもかつてなら(そして多くの日本の大会でも)3走の選手は1走の選手と話す機会があり、コース状況を知ることができるが、近年はそういった情報伝達も厳密に管理されるようになったのか先に走った選手と接触することもできなくなっていた(2011年には走っていない選手が大型ビジョンに映し出される地図を眺めることさえできたというのに)。どこでコースが振られているのか、ルートチョイスがカギとなる勝負レッグがどこにあるのかはわからないままスタートしなければならない。

この日も暑い日だったが隔離エリアは幸い日陰も多く風も通ったのでそこまで暑さを感じることはなかった。僕のスタートは17時半近かったが、平日は夕方にオリエンテーリング練習をすることも多かったので時間に対する不安はなかった。女子が繰り上げスタートを回避できたようで男子も頑張ろうという気持ちになる。

レース展開は1走寺垣内がよい位置につけ、2走結城も序盤はやや遅れているように感じたが後半巻き返してきた。北米アジアのライバルではなくヨーロッパの国と争いになっているのは見ていても楽しかった。しかし自分が走る場合は無理に彼らのペースを意識せず、自分のペースで走ろうと決めてからスタートする。

狭いスタート枠に入るのはトップが来る約15分前でそのタイミングで全チームの3走が入らなければならない。トップと20分差があっても一緒に入らなければならない。このことはしっかりシミュレーションしており、スタート枠で待っていると1分1分が長く感じるが、そういう感情的な感覚に頼らず時計を見て冷静に何分差でどこの国の選手がスタートしていくかを計りながら見送った。

結城がラストコントロールに姿を現す。日本ではダントツの強さを誇る彼らしく最後の勢いは他の選手に勝るとも劣らない力強さがあった。

1番はパークO的な簡単なコントロール位置で振ってあった。2番はやぶの中で入る位置。しかし幸いハンドレイルを使ってすぐそばまでアプローチできる。緊張のためやや体の硬さはあったがまわりに選手はおらず、リズムを作るにはちょうどよかった。

3番、回るか切るか判断を迫るレッグだったが、3走ということで踏み跡もついているだろうと考え真っ直ぐルートを選ぶ。案の定進みたい方向に踏み跡があり、沢まではあっさり出られる。最後はぐちょぐちょで踏み跡は当てにならなかったが位置を定めるのは難しくなかった。ここでベルギーの選手と一緒になる。彼が先にスタートしたのか後にスタートしたのかはそのときは分からなかった。いずれにしても自分のペースを乱さないように心がける。

4番、やぶを進まなければならないレッグだが、大きなオープンに出ればよいだけなので恐れず進める。どうやらベルギーも一緒のようだ。先行されるがアタックで追いつく。

5番、やはりヤブを進むレッグだったがアタックポイントをしっかり定め確実に進む。ベルギーとは違ったのか姿を見ない。

6番、7番、簡単なコントロールが続く。ベルギーにはいずれも脱出で先行されるがアタックで追い抜く展開。この選手、へたっぴだなと思いペースづくりにだけ利用することに。会場内を通るスペクテイターゾーンへ。コーチングゾーンでは「いいペースいいペース」という寺垣内の声しか聞こえなかったが悪くないペースなのだと思い自信を持つ。

会場を通過し8番へ。ぐるっと南を回るルートも見えたが、登りはあっさり登れること、8番の位置は難しいが尾根に当てればリロケートは難しくないと思い真っ直ぐ目のルートで勝負する。ベルギーとはここで分かれる。しかし8のある尾根を登っているところまではよかったが登っていくうちによくわからなくなる。後で見返すと細かくごちょごちょ描かれている要注意ポイントで事前に警戒していたエリアだったが、それに気づかないくらい地図が変わっており、それでもすべてが描かれていないくらい細かな地形だったように思う。先に出たはずのチームのウェアを何度か見かける。目的の尾根に乗ったということは分かったがどっちに出たのか自信が持てず。上か下か。完全に賭けの状態に陥る。

8番のミス

下に行って登り返すことになるより、上に行って下ってくる方が気持ちは楽だと思い、まず左へ進み位置を特定しようとする。結局ラフオープンの角が見えるところまで行かなくては確信がもてず、そこからようやくリロケートしアタックし直し。痛手だったがこのルートではまったくロスなく対応するのは難しかっただろう。今思えば南ルートのほうが格段によかったと思うが、分かれたベルギーも彷徨っていたので結果的にはよかったということになるのかもしれない。(一緒のルートなら最後まで競り合いにもつれ込み負けた可能性が高いように思う。他の国を抜けた可能性もあるわけだが。。)

9番、10番、11番と日本の山を走るようなレッグが続き、無難にこなす。12番は位置に恵まれ道を回る簡単なルートを選べる。脱出していくカナダを見る。カナダとはだいぶ差があったはずだ。よいペースで走れていること、このペースなら追いつける可能性もあるがラストダッシュ勝負になると若そうな向こうに分があるかもしれない。できることなら先に仕掛けたい。そして12番の脱出で後ろの様子を探るも選手の気配はない。この差なら後ろのことはあまり考えなくても大丈夫だろう。

そんなことを考えている間に13番。超えられない柵にはまってしまい距離をロス。前を行く選手の気配が完全に消える。

14番ロングレッグ。鞍部を抜けオープンに上がり、15を見てからアタックするルートを選ぶ。しかし登り口でも選手の気配はまるでない。この時点で同じルートなら捕えても逃げられてしまう。しかし既に前に出ている可能性は?普通に考えたらこのルート一択では?ルートチョイスに裏があるの?など考え、「リレーの基本は周りと同じルートを選ぶこと。しかし3走は勝負に出るならルートチョイスに賭けることも必要だ」というイーキスの教えを思い出し、急きょ南を回るルートに変更。

14番へのアプローチ。ログのラインは9分間で進んだ距離。元のルート(赤)の方が3%ほど短かったがそれでは追いつけない計算。13からすぐ南に脱出するルート(青)ならチャンスがあったかもしれないが9番コントロール(9G)が描かれていて全く読めていなかった。

オープンに出ても前を行く選手の姿は捉えられず。もうよく分からん。とにかく走るしかないと前へ前へ。辛い登りもゼーハー登る。しかし結局他の選手を捕らえることはできずラストコントロールへ。前にも後にも選手がいなかったので省力ペースでフィニッシュレーンを抜けさせてもらい、26位でフィニッシュ。

結果を見れば8番のミスか15番のルート変更がなければカナダやイスラエルを捕らえることはできたことになり、特に15番は彼らのルートを見るとやや悔やまれる。欲を言えばもう1つは抜きたかったが、捕らえたとして抜けたかどうかはわからない。結局のところなるべくしてなった順位だったかもしれない。

リレー結果
1位 ノルウェー 1:47.26
36.33 (2) 35.40 (5) 35.13 (5)
36.33 (2) 1:12.13 (1) 1:47.26 (1)

10位 ロシア 1:52.41 +5.15
37.07 (6) 37.44 (12) 37.50 (11)
37.07 (6) 1:14.51 (11) 1:52.41 (10)トップとのタイム比105%

20位 ハンガリー 2:06.45 +19.19
45.32 (28) 42.39 (21) 38.34 (13)
45.32 (28) 1:28.11 (23) 2:06.45 (20)トップとのタイム比118%

25位 イスラエル 2:20.32 +33.06
40.00 (19) 49.41 (31) 50.51 (28)
40.00 (19) 1:29.41 (27) 2:20.32 (25)トップとのタイム比131%

26位 日本 2:21.52 +34.26
44.12 (25) 48.42 (30) 48.58 (25)
44.12 (25) 1:32.54 (28) 2:21.52 (26)トップとのタイム比132%

区間トップタイム(日本選手のタイム比)
0:36.15 (122%) 0:33.50 (144%) 0:33.51 (145%)

チームのタイムは寺垣内、結城、小泉と走順の通り並び、1走の強みを活かして寺垣内が少し早かった。ここ数年30位前後で競うことが多かった日本チームにとっては少し振り戻すことができたのはよかったと思う。20位とはまだまだ差があるが20位くらいの実力は10年前からあまり変わっていない。日本チームの力が相対的に落ちていると言わざるを得ない。(2008年の20位は117%。そのときの日本は125%で22位)。

事前の準備についてはいろいろなアプローチがあろうが、それについては後述する予定。ひとまずリレーに関してはレース中のコーチングゾーンをもう少し活用できないかと思う。スタート前の選手は情報に触れられないようになっているが、コーチングゾーンにいるコーチや選手はどうやらGPSトラッキングを見ることもできたようだ。強豪国がそこでゆっくり情報を伝えている様子はなかったように見えたが、1走と2、3走のタイムにかなりの差があるのは、エースが出て来るとは言え、何かしらの情報伝達がされているようにも思う。しかしどのくらいまで伝えていいのか、マナー的なことを気にしてしまう面もある。このあたりの対応は年に1回しか世界の舞台でリレーを競っていない日本チームの弱点だろう。必要ないなら使わなくてもよいが使えるものを使わないままなのは少しもったいない。


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