WOC2018 in Latvija ⑦ ロング後半とまとめ

コースは後半。ここまでとは打って変わってタフなレッグが続く。ここからがWOCロングの本番か。

10→11→12
やや長めのレッグが続く。ルートチョイスがありそうと思ったが、「あるのか?」という感じ。大回りになりすぎる。11-12は立入禁止エリアの左を巻く(青)チョイスがあったようだが(トップ選手のタイムはどちらもあまり変わらず)、僕の力量ならこのルート一択だっただろう。

ナビゲーションは問題がなかったが9番でのミスもあってか谷の中で慎重になりすぎている感覚はあった。この2レッグだけで30分。体力的にもきつくなってきており自分でもペースダウンを感じる。

12→13
リレーで見たことのある場所。当初はリレーのルートの逆回り(青)で進むつもりだったが、進み始めてリレーのルート分析を思い出し、南からのアタックに切り替えてしまう。であれば緑ルートでよかった。ルートミスで2分程度のロス。判断力の低下が見られる。

13→14→15
会場を通りもう1ループ。この時点で90分。残りの距離を考えると目標達成が厳しいことに気づく。周囲の応援が「残りもしっかり」的な雰囲気だったので「あまりよい結果ではないのか?」と思ったりする。

コーチングゾーンではコーラや電解質などを補給。1分以上のピットインとなってしまった。その間にモルドバの選手に抜かれる。

写真は公式サイトより photo by WOC2018

15もリレーで使ったようなエリア。先行する選手につられ行き過ぎてしまう。30秒のロス。ルートは悪くないと思っていたがよりまっすぐ進んだ方(青)が早くて簡単であったが読めず。

15→16→17
16は細かな部分でルートチョイスをしなくてはいけなかったのだろうが、そこまで考えられず。ペースを維持するのがやっとの状態であった。

17は真っすぐ(緑)かまわるか。藪の湿地は厳しいことからオープンを回るルートを選択。南周りのルート(青)はまったく見えず。

17→18→19
ルートチョイスはあまりなかったがルートがふらつき始め、何度も軌道修正を求められる。体力が削られ判断力が低下する中で、技術に対する自信を揺さぶってくる。まさにKing of Orienteeringを決めるレースなのだと実感する。19で最後のジェル補給。2時間手前。135分は厳しい。が荒れた展開なら順位のチャンスはまだあるはず?

19→20
ジェルを取りながらルートチョイス検討。左回り(緑)、右回り(青)を考える。左回りの細い尾根①は過去地図ではあまり行きたい感じの場所ではなく、無意識的にルートから外してしまい西周りを選ぶ。11番の北の斜面②を登っているときに「しまった、左の尾根行けるじゃん、そしてアタックも楽ではないか」と気づく。登りのペース低下を考えるとここからでもルート変更はありではないかと思い、実際のルートへ変更。

結果的には最初から東周りを選択するのが正解だっただろう。過去地図に囚われすぎた失敗であった。さらにトップは僕が登った②からまっすぐルート(水色)と知る。確かに距離は短く登りは僕のルートと変わらない。頭に十分血が回らない中で細かなルート検討を要求してくる。

20→21→22
21はつなぎのレッグ?22はわざわざ崖の下だけ立入禁止エリアを抜いているので通れるだろうと選択。しかしトップ選手は崖の上の斜面上を豪快にコンタリング。集中力もいるルート。力の差を感じる。

22→23→24→◎
リレーの最終パートと似たような課題。23は「また登らせるの?今回はちゃんと登ろう」とあっさりルートを決める。しかしトップ選手はヤブの谷の中をガンガン進むルートであった。

24、これまっすぐ行く人行くかね?と思いながらリレーの時と同じルートを選択。しかし優勝したオラフは当たり前にまっすぐであった。恐るべし。

◎いよいよフィニッシュ。リレーの時は流し気味だったフィニッシュレーンを全力で駆け抜ける。意外と走れるな。もっと途中を追い込めたのでは?と思いつつフィニッシュラインを切る。雨が強くなり始めていた。

結果は下表の通り。順位もタイム比も目標に届かなかったし、過去の他人や自分の結果と比較してもあまりよい方だとは言い難い。ロスを削れたと考えたとしてもどんなによくても最大7-8分くらいの短縮で、それでも145%55位前後で目標には及ばない。まったく力不足だったというのが残念だが正直なところなのだろう。

体力面の不足、ルートの揺らぎや細かなロスが多いなど技術が足りていない部分が多かったと感じる。さらにラトビアでのルート研究の積み重ねやこのレベルのコースへの経験が不足していることも大きな要素を占めるだろう。ただ現状で出来ることをしっかり発揮できたことは一定の満足感を与えてくれているし、足りないと分かっていることがそのまま結果になっているなと冷静に受け止めている自分もいる。

望む結果を出すためにやらなければならないことは分かっているが、そこまでコミットできるのかどうかというのが今の僕にとって最大の課題だろう。世界選手権に出ることだけを目標にすることにはもはや意義を感じられない(だったらもっと若い人に行ってほしい)。世界選手権で結果を残せるアプローチができるかどうかを真剣に検討し、それが実行でき、成果を出せれば、再びこの舞台を目標に定めたい。

ところでリレーでもそうだったがコーチングゾーンは意外と重要であると感じた。ロングの場合、特に今回の様に残りの距離がまだある段階で通過するのであればそこでの雰囲気は選手のメンタルに影響するように思う。結果が良い悪いに限らず「いいぞいいぞ、いけるぞー」といったcheerがもっと欲しい。長いレース、観客側はその時点である程度結果が分かってしまっているが、選手は自分の状況はまったく分からない。良いのかもしれないし悪いのかもしれないという不安の中で走っている。よい雰囲気を得られれば残りのパフォーマンスをより高いレベルで保てるだろう。これは来年誰が走るにしてもそうなるようにお願いしておこう。

日本チームとしては日々のトレーニングの改善はもちろんだが、やはり何より海外テレインでの経験、国際レベルのレース経験が減少している点をなんとかしないことには浮上はありえないだろう。この1年のうち1/12をラトビアで過ごしたという寺垣内選手のリレーでのパフォーマンスがそれを証明していると思う。ワールドカップやトレーニングキャンプへの遠征を個人レベルではなくチームレベルで行えるだけの人材(選手、スタッフ)・資金を集められるかどうか、そのあたりをいい加減見直さなくてはいけないだろうし、来年からフォーマットが変わることは動機づけを高めるチャンスなのではないかと思う。チームとしてターゲットとなる大会(年)をもっと明確・明瞭に設定するのはありではないかと思う。


WOC2018 in Latvija ⑥ ロング前半

世界選手権最終レース、ロングディスタンス。僕にとってはようやく個人戦。既にリレーでレース感覚を得ることができたので、大きな緊張はなく、レースに臨めた。

何度も書いているが僕にとっては初めての個人決勝の舞台。想うことはたくさんあったが、感情的感傷的にならずになるべく冷静にレースを迎えるようにしようと努めた。特に目標設定は慎重だった。出る種目がロングかミドルか決まる前は、かつての予選通過順位に相当する45位以内を目標の1つにしてみたが、やや厳しいハードルかもしれない。種目がロングに決まった後、現実的な目標を再設定した。

2014年、現在のフォーマットになった最初の年に今回のチームメイトでもある結城克哉選手がロングで記録した50位。結局これが現フォーマットの日本男子最高順位となっているが、これが順位目標としてはよい設定に思えた。ここ4大会ではテレインにより差はあるが、トップ比で135%以内を出せば50位以内は確実となる。今回のウイニングは100分なので135分で走ればよい。

今回のコースは15.5km、600mと発表されていた。果たして自分はどのくらいで走れるのだろうか。目安になったのは6月の東大大会と全日本。どちらも登距離約4%のコースでWOCと同程度、前者は11.8kmを1:28:20(キロ7′30弱)、後者は13.7kmで1:58:09(キロ8’30強)。途中でミスをし失速もした全日本のペースでも135分は現実的な数字であり、十分に目標を達成できるはず。ただ全日本で失速したような失敗を繰り返していてはいけない。距離に対してペース作りや補給の計画を練った。それほど暑くないだろうと思っていたが、痙攣対策に電解質補給もできるようサプリやドリンクも日本から持参した。

ラトビアに来てから公開された情報でコースが16100m、登り640mに変更され、ややタフさが増した。タフさが増したほうが荒れる展開になりうるのでチャンスはあると思った。さらに予想に反してラトビアは暑い日々が続き、これなら周りがより落ちてくる、ますますチャンスは大きくなるに違いないと楽観していたが、あいにくロング前日から涼しい気候が戻って来てしまった。勝負の行方を天に任せるようではいかんわな、と自分を戒めながらレースの支度をする。

その過程でふと村越さんの記録が気になった。2001年、フィンランドでのWOCでロング決勝に残った彼の写真を見て世界選手権とはどんな場所なのか憧れるきっかけとなった。タイム比や順位は目標設定の段階でも一度見ており、ああそうだったかと思い出すくらいだったが、「あれ?そういえばこの時の村越さんと年齢が近いのでは」ということに気づいた。僕が40、当時の彼が41歳。ここで勝てたら帰ってから威張れるぞと思う。

旧マップは公開されていたが、立入禁止エリアはそれより広く設定されており、ミドルでは予想外の場所を使ってきたりした。さらにこっちに来てから立入禁止エリアが追加され、既に追加されたエリアに入ってしまった選手がいるというので、レース前日に全選手が競技エリアの一部に入る機会があったりもした。奇をてらうコースの可能性もある。

そして迎えた当日、スタートエリアへ向かうと予想通り会場の北側からスタートするコースレイアウトになっていることが分かった。おそらく最初はフラットなエリアを使い、中盤以降、川沿いの急な斜面を切るか回るかを問うルートチョイス課題があるだろう。もしかしたら昨日見てきた場所を使うかもしれない。

女子を待ってからのスタートなので随分待ち時間があった。本を読んだりしながら過ごそうと思っていたが、あんまり集中して読むことができず、周りの選手やコーチの動きを観察していた。どの選手も緊張感があり、自分だけではないんだなと安心する。

いつも目(コンタクト)の防護のためグラスをかけるが、スタート直前で雨が降り出してきた。雨での不快さを考えるとグラスはかけない方がよい。ぎりぎりまで様子を見て、グラスをオフィシャルに渡しスタートレーンへ入る。

スタートに立つとTVカメラ。しかし今頃女子のレースが佳境なのできっと映っちゃいないだろうなと思いながら地図を取り、走り出す。マップ交換なし、ループもなさそうなのが意外だった。

△→1 短いが大きな地形的特徴がない。コンパスでまっすぐ。やや慎重なペースだったがうまくヒット。

1→2 大きな湿地切りの後、1番同様、地形的特徴のない場所へのアタック。ただし2の直前に細長い特徴的に描かれた沢①があるのでその先端からアタックすれば難しくはないだろう。湿地は昨日見た場所だった。岬の様に伸びる場所②が走りやすいことも見ていたので自信を持って進めた。アタックポイントの谷の直前まで順調に進んでいたが肝心の谷がまったく分からない浅い地形だった。歩測から明らかに行き過ぎていると思う。さぁ、どうする、と思ったときに目の前にヤブ③を認識し2の北東のそれだとわかりリロケート、再アタック。30秒くらいのロスがあった。

2→3→4
地形が明瞭な場所へのアタックが続く。3は簡単だった。4はその尾根の先端に出るようレッグ線左側をまっすぐ進むつもり(青)だったが道の出たところでヤブがきつく、回避するため右側へ迂回。これも30秒くらいは無駄にした。

4→5→6
5はいかにも見つけづらそうなところに置いてある。5の沢に確実に入れるようエイミングオフ。藪の湿地が進みづらくペースは上がらないが決して悪くない。

6は地形的特徴がない場所へのアタック。しかし前日テレインに入れた時に6のすぐ西のドーナツ状のオープンが遠めからもわかることを見ており、そこを目標に進み難なくヒット。後ろから来たロシアの選手と同時に取る。

6→7→8
7は湿地の中の切り開きに出るつもりだったがロシアの選手がまっすぐ行くので便乗する。湿地を渡り切ったところでリロケート。ロシアの選手は少しずれてるということもわかりルート補正して先行。

8はまるで日本のオリエンテーリングでありがちなレッグ。技術的な課題はなくロシア選手とほぼ一緒に到着。

8→9→10
9は予想した通りのロングレッグ。ここまで35分。距離的には1/4くらいだろうか。ただアップがほとんどないので実際は1/5強くらいか。いずれにしてもそんなに悪くないペースのはず。早めのジェル補給をしながらルートチョイスを検討。

まっすぐはなし。東を回るか西(緑)を回るか。距離を考えると東まわり。アタックは10の数字が書いてあるところ①から沢を数えながらアタック。そこまでは傾斜変換沿い②を走る、オープンに出るまでもチョイスがある。3番辺りを通るか大きく回る(水色)か。3番の周辺は分かっている。その後の登り返し③も少なくて済む、回るより早いだろうとルートを決定。ロシア選手の姿をかろうじて捕えらるくらいのタイミングで脱出。

オープンに出たところで前の選手の姿が消える。ルートが分かれたか、少し残念だったが追いつける可能性もあると思い前へ進む。ラトビアに来てから、登るか回るかを常に考えていた。登りはきついが日本の柔らかい地面に比べると登りやすい。回るのが必ずしも早いわけではない。緩い斜面を登れるなら登るのはありだと決めていたのでこのルートは悪くなかったと思う。

結局アタックポイントまでずっと一人旅だったがペースは悪くないだろう。アタックは気を付けようと慎重に進む。最初の尾根を登りまでは問題なし。ただその先の谷がかなり険しくヤブもあったためペースが上がらない。2つめの沢にコンタリングで入る。沢の中に岩がありそれを使ってリロケート。いよいよこの次の沢だ。同じくコンタリングで斜面を走る。谷が見えてくる。これだこれだと取り着く。が登っても何もない。コンパスを使うと南を向いている。なぜ南?もしかして全然違うところに入り込んでいた?いやそんなはずはない。少しパニックになりかける。とにかく現在地を確定させたい。もはや谷の中では自信が持てない。尾根の上が明るくなっている。なにか分かるだろうと登ってみる。農家が見える。それでもすぐにはどこにいるのか分からず、少し考えてようやく現在地を把握。なんだか分からんが反対側の斜面に入り込んでしまった。ただ、そのことにもすぐには自信を持てず、正しいと確信するまで時間がかかった。再アタックはまったく問題なし。

ミスのことは今は忘れようと気を取り直し10へ。問題はなかったがヤブの中、ミスの後ということもありだいぶ慎重になってしまった。ここまででちょうど60分。距離登り的にはちょうど半分くらいか。まだ可能性は残っているはず、とジェルを補給。

9はナビゲーション上の最大のミスであった。4分くらいのロスか。1つ手前の沢に入ってから油断してしまいコンパスを見なかったのが一番の原因だろう。しかしその後、谷底を切っているにも関わらずそれに気づけなかったことは今でもよく分からない。何を見ていたのか。いつまでたってもこういうミスがなくせないのは技術面というよりは心理面での問題だろうと思う。


田舎の生活その80

昼間はまだまだ暑いが朝晩は涼しくなり、寝冷えしそうなときもある。

久しぶりの海外遠征から帰国したまさにその日、「徳山の盆踊」が行われるというので初めて見に行った。川根本町の徳山という集落にて行われ、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。なかなか都合が付かず毎年見逃していたがようやく見ることができた。

盆踊の中で披露される舞の1つ鹿ん舞。男の子が鹿の格好をして踊る。

あいにくの夕立ちで、子連れだったため最後まで観ることはできなかったが、ムラの子どもたちがいくつかの地点で踊りを披露しながら神社まで行き、最後は神社に奉納する。その踊りの列に連なって観客たちも一緒に移動していく。

神輿・山車のお祭りで育った身としては踊りの列についていくのはなんだか不思議な感じもしたが、行列に連なると主役の形は違えども「ああ、祭りだ」という雰囲気を肌で感じることができた。天気のおかげが人口が減ったせいか、少し活気に欠ける感は否めなかったが、最盛期にはさぞ賑やかだったのだろう。かつての様子にも想いを馳せながら祭りを鑑賞した。町内各集落にこのような神楽があったそうだが今はわずかに残るだけ。

話題はガラッと変わる。返済し続けてきた奨学金をようやく完済できた。高校から大学院までもらい続け、就職時には500万近い金額となっていた。失業しアルバイトしていた頃、前の職場に再就職した後もしばらくは収入が少なく、借金を借金で返すようなまさに奨学金地獄に陥る時期もあったが、今の仕事を副業として始めたころから生活費に余裕ができるようになり、いくらかは貯金もできるくらいになった。数年前には残額も減り、一括返済できるくらいになったが、死んだら返さなくていいこともあるというので「死んで損するのもいや」と貧乏根性丸出しで有利子だった大学時代のものだけ先に完済し、無利子のものは毎月支払い続けてようやくの完済。

この14年、いろいろあったが返済猶予してもらうこともなく返し続けた。本当によくがんばったなぁと感慨に浸らずにはいられない。


WOC2018 in Latvija ⑤ リレー

続いてレースレポート。まずは最初に出場したリレーについて。

これまで出た大会ではいつも最後に実施されていたフォレストの国別対抗リレー。ここ数年は最後にロングを行い、その前にリレーを行うことが増えつつあるようで(全部走る選手への体力面での配慮と思われる)、僕としては個人戦より前にリレーを走るというのは初めての経験となった。

リレーまで日本チームはあまりよい結果を残せていない。若い選手が多いためかチームの雰囲気こそ悪くはないが、このままいつもの結果に落ち着いてしまってはいかんなぁという気持ちがあった。せめて昨年を上回る結果を残して少しは上向きになって大会を終え、来年につなぎたい。

かと言ってこんな直前にできることはあまりない。できるだけ冷静に、自分たちのパフォーマンスをしっかり発揮することに集中するしかない。ミドルが終わったあと、おそらくこれまでなら戦力分析や細かなシミュレーションなどを行っただろうと思うが、あまりよくない結果でそれをしても気持ちが沈むか無理に力を出そうとするだけだろうと思い、他の2人にも調子を確認するぐらいで、できるだけ気楽に走れるよう心がけてはいた。

個人的には今回のWOC最初のレースということでしっかりと手続きを行い、最後まで走り切りよいイメージを持って次のロングを迎えたい。また初めてWOCでアンカーを務めるということで決着をつけねばならない場面でどういう展開があるかをいくつか想定した。相手がいない1人レース状態、カナダや中国などライバル国との競争、強い国との競り合いの可能性もゼロではない。パターン振りがある場面とそうでないと分かっている場面の切り替えなどをイメージ。

レースは女子から行われるが地図やコースの情報が漏れないよう男子も早めに隔離エリアに入らなくてはいけない。隔離エリアではスマホなどの情報通信機器の利用が禁止されており、レース展開は会場から流れて来るアナウンスからしかわからない。しかもかつてなら(そして多くの日本の大会でも)3走の選手は1走の選手と話す機会があり、コース状況を知ることができるが、近年はそういった情報伝達も厳密に管理されるようになったのか先に走った選手と接触することもできなくなっていた(2011年には走っていない選手が大型ビジョンに映し出される地図を眺めることさえできたというのに)。どこでコースが振られているのか、ルートチョイスがカギとなる勝負レッグがどこにあるのかはわからないままスタートしなければならない。

この日も暑い日だったが隔離エリアは幸い日陰も多く風も通ったのでそこまで暑さを感じることはなかった。僕のスタートは17時半近かったが、平日は夕方にオリエンテーリング練習をすることも多かったので時間に対する不安はなかった。女子が繰り上げスタートを回避できたようで男子も頑張ろうという気持ちになる。

レース展開は1走寺垣内がよい位置につけ、2走結城も序盤はやや遅れているように感じたが後半巻き返してきた。北米アジアのライバルではなくヨーロッパの国と争いになっているのは見ていても楽しかった。しかし自分が走る場合は無理に彼らのペースを意識せず、自分のペースで走ろうと決めてからスタートする。

狭いスタート枠に入るのはトップが来る約15分前でそのタイミングで全チームの3走が入らなければならない。トップと20分差があっても一緒に入らなければならない。このことはしっかりシミュレーションしており、スタート枠で待っていると1分1分が長く感じるが、そういう感情的な感覚に頼らず時計を見て冷静に何分差でどこの国の選手がスタートしていくかを計りながら見送った。

結城がラストコントロールに姿を現す。日本ではダントツの強さを誇る彼らしく最後の勢いは他の選手に勝るとも劣らない力強さがあった。

1番はパークO的な簡単なコントロール位置で振ってあった。2番はやぶの中で入る位置。しかし幸いハンドレイルを使ってすぐそばまでアプローチできる。緊張のためやや体の硬さはあったがまわりに選手はおらず、リズムを作るにはちょうどよかった。

3番、回るか切るか判断を迫るレッグだったが、3走ということで踏み跡もついているだろうと考え真っ直ぐルートを選ぶ。案の定進みたい方向に踏み跡があり、沢まではあっさり出られる。最後はぐちょぐちょで踏み跡は当てにならなかったが位置を定めるのは難しくなかった。ここでベルギーの選手と一緒になる。彼が先にスタートしたのか後にスタートしたのかはそのときは分からなかった。いずれにしても自分のペースを乱さないように心がける。

4番、やぶを進まなければならないレッグだが、大きなオープンに出ればよいだけなので恐れず進める。どうやらベルギーも一緒のようだ。先行されるがアタックで追いつく。

5番、やはりヤブを進むレッグだったがアタックポイントをしっかり定め確実に進む。ベルギーとは違ったのか姿を見ない。

6番、7番、簡単なコントロールが続く。ベルギーにはいずれも脱出で先行されるがアタックで追い抜く展開。この選手、へたっぴだなと思いペースづくりにだけ利用することに。会場内を通るスペクテイターゾーンへ。コーチングゾーンでは「いいペースいいペース」という寺垣内の声しか聞こえなかったが悪くないペースなのだと思い自信を持つ。

会場を通過し8番へ。ぐるっと南を回るルートも見えたが、登りはあっさり登れること、8番の位置は難しいが尾根に当てればリロケートは難しくないと思い真っ直ぐ目のルートで勝負する。ベルギーとはここで分かれる。しかし8のある尾根を登っているところまではよかったが登っていくうちによくわからなくなる。後で見返すと細かくごちょごちょ描かれている要注意ポイントで事前に警戒していたエリアだったが、それに気づかないくらい地図が変わっており、それでもすべてが描かれていないくらい細かな地形だったように思う。先に出たはずのチームのウェアを何度か見かける。目的の尾根に乗ったということは分かったがどっちに出たのか自信が持てず。上か下か。完全に賭けの状態に陥る。

8番のミス

下に行って登り返すことになるより、上に行って下ってくる方が気持ちは楽だと思い、まず左へ進み位置を特定しようとする。結局ラフオープンの角が見えるところまで行かなくては確信がもてず、そこからようやくリロケートしアタックし直し。痛手だったがこのルートではまったくロスなく対応するのは難しかっただろう。今思えば南ルートのほうが格段によかったと思うが、分かれたベルギーも彷徨っていたので結果的にはよかったということになるのかもしれない。(一緒のルートなら最後まで競り合いにもつれ込み負けた可能性が高いように思う。他の国を抜けた可能性もあるわけだが。。)

9番、10番、11番と日本の山を走るようなレッグが続き、無難にこなす。12番は位置に恵まれ道を回る簡単なルートを選べる。脱出していくカナダを見る。カナダとはだいぶ差があったはずだ。よいペースで走れていること、このペースなら追いつける可能性もあるがラストダッシュ勝負になると若そうな向こうに分があるかもしれない。できることなら先に仕掛けたい。そして12番の脱出で後ろの様子を探るも選手の気配はない。この差なら後ろのことはあまり考えなくても大丈夫だろう。

そんなことを考えている間に13番。超えられない柵にはまってしまい距離をロス。前を行く選手の気配が完全に消える。

14番ロングレッグ。鞍部を抜けオープンに上がり、15を見てからアタックするルートを選ぶ。しかし登り口でも選手の気配はまるでない。この時点で同じルートなら捕えても逃げられてしまう。しかし既に前に出ている可能性は?普通に考えたらこのルート一択では?ルートチョイスに裏があるの?など考え、「リレーの基本は周りと同じルートを選ぶこと。しかし3走は勝負に出るならルートチョイスに賭けることも必要だ」というイーキスの教えを思い出し、急きょ南を回るルートに変更。

14番へのアプローチ。ログのラインは9分間で進んだ距離。元のルート(赤)の方が3%ほど短かったがそれでは追いつけない計算。13からすぐ南に脱出するルート(青)ならチャンスがあったかもしれないが9番コントロール(9G)が描かれていて全く読めていなかった。

オープンに出ても前を行く選手の姿は捉えられず。もうよく分からん。とにかく走るしかないと前へ前へ。辛い登りもゼーハー登る。しかし結局他の選手を捕らえることはできずラストコントロールへ。前にも後にも選手がいなかったので省力ペースでフィニッシュレーンを抜けさせてもらい、26位でフィニッシュ。

結果を見れば8番のミスか15番のルート変更がなければカナダやイスラエルを捕らえることはできたことになり、特に15番は彼らのルートを見るとやや悔やまれる。欲を言えばもう1つは抜きたかったが、捕らえたとして抜けたかどうかはわからない。結局のところなるべくしてなった順位だったかもしれない。

リレー結果
1位 ノルウェー 1:47.26
36.33 (2) 35.40 (5) 35.13 (5)
36.33 (2) 1:12.13 (1) 1:47.26 (1)

10位 ロシア 1:52.41 +5.15
37.07 (6) 37.44 (12) 37.50 (11)
37.07 (6) 1:14.51 (11) 1:52.41 (10)トップとのタイム比105%

20位 ハンガリー 2:06.45 +19.19
45.32 (28) 42.39 (21) 38.34 (13)
45.32 (28) 1:28.11 (23) 2:06.45 (20)トップとのタイム比118%

25位 イスラエル 2:20.32 +33.06
40.00 (19) 49.41 (31) 50.51 (28)
40.00 (19) 1:29.41 (27) 2:20.32 (25)トップとのタイム比131%

26位 日本 2:21.52 +34.26
44.12 (25) 48.42 (30) 48.58 (25)
44.12 (25) 1:32.54 (28) 2:21.52 (26)トップとのタイム比132%

区間トップタイム(日本選手のタイム比)
0:36.15 (122%) 0:33.50 (144%) 0:33.51 (145%)

チームのタイムは寺垣内、結城、小泉と走順の通り並び、1走の強みを活かして寺垣内が少し早かった。ここ数年30位前後で競うことが多かった日本チームにとっては少し振り戻すことができたのはよかったと思う。20位とはまだまだ差があるが20位くらいの実力は10年前からあまり変わっていない。日本チームの力が相対的に落ちていると言わざるを得ない。(2008年の20位は117%。そのときの日本は125%で22位)。

事前の準備についてはいろいろなアプローチがあろうが、それについては後述する予定。ひとまずリレーに関してはレース中のコーチングゾーンをもう少し活用できないかと思う。スタート前の選手は情報に触れられないようになっているが、コーチングゾーンにいるコーチや選手はどうやらGPSトラッキングを見ることもできたようだ。強豪国がそこでゆっくり情報を伝えている様子はなかったように見えたが、1走と2、3走のタイムにかなりの差があるのは、エースが出て来るとは言え、何かしらの情報伝達がされているようにも思う。しかしどのくらいまで伝えていいのか、マナー的なことを気にしてしまう面もある。このあたりの対応は年に1回しか世界の舞台でリレーを競っていない日本チームの弱点だろう。必要ないなら使わなくてもよいが使えるものを使わないままなのは少しもったいない。


WOC2018 in Latvija ④

大会が終わりすっかり時間が経ってしまったが、今大会に向けた準備とレースについてまとめておきたい。

まず準備について。最初に書いた通り、いつから大会を目指し始めたという明確な境目はない。毎年やっているように12月から身体を作り始め、春夏のレースにターゲットを置くというサイクルのなかで今年は8月上旬のWOCにフォーカスしようと思い、スケジューリングした。

昨年11月に足の指を骨折してしまい、それが完治したのが1月上旬。本来より1ヶ月以上遅い鍛錬期入りで、出たいのはロングだが、狙うならミドルと想定し(+リレー。スプリントは当初から考えていない)、冬の間はそれに合わせたトレーニングをしていた。

正直に告白すれば、他の選手のパフォーマンスを見て、この時の状態で代表に選ばれるという自信がまったくなかったのだ。しかし来年狙いますと言える程余裕のある身でもない。まずはミドルで結果を出せるように狙っていくのがアプローチとして適切だろうという判断だった。

途中のターゲットは4月の代表選考会と6月の全日本大会。4月までのトレーニングは例年に比べれば順調であったが最低400kmという目標はほとんど達成できなかった。しかし森を走る距離は長く取っていたし、昨年までに比べても走れるようになった感覚があり、自信を得ることはできていた。

12月 305km / 01月 396km / 02月 370km / 03月 418km
平日のトレーニング:300×20、400×10-20、1000×7-10、オリエンテーリング(コンピ、直進)

予定していたKOLC大会が雪で延期になってしまい、今シーズン最初のオリエンテーリングレースがいきなり代表選考会になってしまった。身体の動きは緊張でとても硬かった。ホームアドバンテージのあるテレインだったことに救われた感もあるが、パフォーマンス自体は悪くなく、選考を通った。大体イメージ通りの体に仕上がっていたのでチームの中でも最初は予定通りミドルを希望した。

04月 387km / 05月 448km / 06月 351km / 07月 246km
平日のトレーニング:500×20、1000×10-14、オリエンテーリング(3-4km)

次のターゲットは6月の全日本。全日本はロングディスタンスだが、国内のロングは世界のミドル+α程度なので、ターゲットに合わせてトレーニングを積んでいれば十分対応できるだろうという計算であった。KOLC大会、代表合宿、東大大会など例年不足しがちだったレース形式の練習を踏み、実戦感覚も掴む。

迎えた全日本。予想に反し、予告された通りの100分想定、実際は115分以上かかるという長いレースになった。身体がその長さ(暑さ)に対応していなかったが、しかしその割には悪くない結果だったな、もう少し対策をしておけば十分対応できるだろう、という感覚を得た。最初にも書いたが来年ロングを目指すと言って計画通りに目指せる保障はない。対応できるなら純粋に出たい種目をと思い、希望を変え、その希望が叶うこととなった。

予定外だったのは全日本でやった足首捻挫で思ったよりも治りが遅く、暑くなる前にもう一度しっかり距離を踏みたかったがそれが叶わなかった点だ。完治した7月中旬には酷暑となり、大会も近いことから無理して走り込まず技術確認とコンディショニングを目的としたトレーニングを中心とする。

そしてラトビアへ。現地では2週間の滞在。世界選手権単独の遠征としては比較的長い期間だったが現地でやったことは過去になく少なかっただろう。地図は日本でも研究できる。そしてこれまでのヨーロッパの森での経験と、今回のテレインが日本の森に似た地形だったこともあり対応には苦しまないだろうという自信があった。現地で森に入ってみてもその通りだったのでとにかくピーキングを重視してゆったり調整を行った。日本でも報道されているが今年はヨーロッパも暑く、疲労を貯めないという点でその判断は適切だったと思う。

ただロングに出る上で、かなり長めのルートチョイス練習は実際にやっておきたかったと今になって思う。地図上の研究だけではなく実際に現地を走ってみないと掴めない感覚がある。しかし大会直前にそれをやるのはなかなか勇気がいる。ベストな状態を作るためにはやはり事前のトレーニングキャンプが必須であろう。

8/1 出国・現地着
8/2 am移動 / pmロングタイプのテレインでオリエンテーリング(1:15)
8/3 am7月に開催されたWOCテストレースのコースをレースペース+ジョグペースでオリエンテーリング(0:50) / pm ミドルモデルイベントの地図でテレインウォーキング(0:20)+テクニカルモデル
8/4 amスプリント予選応援 / pmジョギング(0:30)+開会式
8/5 amレスト / pmウォーキング(1:00)スプリントリレー応援
8/6 amミドルモデルイベントをレースペースでオリエンテーリング(0:35) / pmレスト
8/7 amミドル決勝応援 / pm宿舎移動
8/8 amロングモデルイベントをレースペースでオリエンテーリング(0:50) / pm レスト
8/9 amレスト / pmリレー(0:50)
8/10 amレスト / pmスプリントリレー下見ウォーキング(0:50)
8/11 amチーム内スプリントリレー観戦 / pmロング(2:30)
8/12 チーム現地解散
8/13 noname打ち合わせ
8/14 帰国(15日着)

大会までのトレーニングを振り返ると、最低400km、走るべき時は600kmまで走り込みたいという理想があったがまったく叶わなかったので体力面で差が出てしまうのは当然の結果とも言える。オリエンテーリングの技術練習は週末のレース回数こそ少ないが、平日(の仕事の後)のオリエンテーリング練習はコンスタントにできており、特にここ最近直進の精度が高まっていることには自信を持てるようになった。しかしレース中、ふとしたことで気が緩むなどの問題は実戦経験を踏まないと減らせない面もあり(あるいはレースに代替しうる練習方法の開発)、今後を考えると体力問題とともに課題と言えるだろう。