田舎の生活その9

9月の家
川根本町は9月に入りすっかり秋めいてきた。朝の気温は20℃を切り、寒がりな妻は冬のような格好をし始めた。
今月も海外遠征にいったり、講師やイベントのお仕事で外に行くことが多かったが、家にいるときはその準備などで忙しく一歩も家から出ない生活になってしまうこともあった。昼間は時々近所のおばちゃん、おばあちゃんが通りがかってお話してくれることがあるくらい。ほとんどの日は誰とも話さず夜になる。僕はもともとインドア派の引きこもり型なので、そんな生活でも満足できてしまうのだが、さすがにこんな生活をずっと続けていてはいかんと思い、もうちょっと知り合いを増やそうとたまたま町役場の広報で案内が出ていた観光ワークショップに公募した。
その1回目が先日行われ参加してきた。今後の川根本町の観光計画を作るための市民参加型プロジェクトのようであったが、実際に集まったのは観光業界に携わる人たちがほとんど。みなさん顔なじみばかりで、案の定僕は浮いた存在になってしまったが、しかし会が進むにつれて色々な話を聞くことができた
例えば川根本町には火の見櫓が多く、かつて火の見櫓サミットなるイベントも開催されたそうだ。確かに多いなと思っていたが、そう言われてからあらためて町の中を走っているとたしかにいろんな形の火の見櫓がいたるところにある。これはちょっとマニアには堪らんだろうなぁ。
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▲近所の大小新旧様々な火の見櫓
それからかつての大井川はもっと水がきれいで(今でさえ江戸川を見てきた人間にはきれいにみえるが)、鮎やヤマメが手づかみで取れただとか、南アルプスの南端で町内最高峰の光岳はライチョウやハイマツは日本だけではなく北半球における南限であり非常に貴重だとか、そんな話を聞き、「あー、この分野はあの人たちに聞けばいいんだな」というのがなんとなく分かってきた。とくに山に詳しい方を知れたのは嬉しい収穫。
ただそういうウンチク的な話をしているうちはよいのだが、いざこれからの観光をどうするべきかといった話に入っていくと、あっちの地区はどうで、古い住民はこうで、移住組はああで、とちょっと雰囲気が陰ってくる。利権というと大げさで、実際は自分ちの収入が増えるか減るかという現実的な問題が何か新しいことをしようというときの足かせになっているようにも感じた。そしてそんな中で僕はナビゲーションスポーツを町の一大イベントとして開催できるのだろうか、まだ町のことも何にもわかっていないのに大丈夫だろうかと不安にさえなってきた。
そんなことを色々考えながらの家への帰り道、大井川を渡っているとき、月が川面に美しい姿を見せていた。静かな谷間の町には川と流れと虫の声しか聞こえない。ゆっくりとしか進まない現状にちょっと焦っていたが、来てまだ1年も立たない新入りなのだ、ずっとここに住むのだし焦らずやればいいじゃないか、と思う。
ワークショップはあと2回ある。スケジュールの都合上全部行けるか分からないし、今回のワークショップの役に立つのかもわからないが、まずは僕のような人間が町に住んでいるということをみなさんに知ってもらえるようにしていきたい。

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