WOC2018 in Latvija ⑥ ロング前半

世界選手権最終レース、ロングディスタンス。僕にとってはようやく個人戦。既にリレーでレース感覚を得ることができたので、大きな緊張はなく、レースに臨めた。

何度も書いているが僕にとっては初めての個人決勝の舞台。想うことはたくさんあったが、感情的感傷的にならずになるべく冷静にレースを迎えるようにしようと努めた。特に目標設定は慎重だった。出る種目がロングかミドルか決まる前は、かつての予選通過順位に相当する45位以内を目標の1つにしてみたが、やや厳しいハードルかもしれない。種目がロングに決まった後、現実的な目標を再設定した。

2014年、現在のフォーマットになった最初の年に今回のチームメイトでもある結城克哉選手がロングで記録した50位。結局これが現フォーマットの日本男子最高順位となっているが、これが順位目標としてはよい設定に思えた。ここ4大会ではテレインにより差はあるが、トップ比で135%以内を出せば50位以内は確実となる。今回のウイニングは100分なので135分で走ればよい。

今回のコースは15.5km、600mと発表されていた。果たして自分はどのくらいで走れるのだろうか。目安になったのは6月の東大大会と全日本。どちらも登距離約4%のコースでWOCと同程度、前者は11.8kmを1:28:20(キロ7′30弱)、後者は13.7kmで1:58:09(キロ8’30強)。途中でミスをし失速もした全日本のペースでも135分は現実的な数字であり、十分に目標を達成できるはず。ただ全日本で失速したような失敗を繰り返していてはいけない。距離に対してペース作りや補給の計画を練った。それほど暑くないだろうと思っていたが、痙攣対策に電解質補給もできるようサプリやドリンクも日本から持参した。

ラトビアに来てから公開された情報でコースが16100m、登り640mに変更され、ややタフさが増した。タフさが増したほうが荒れる展開になりうるのでチャンスはあると思った。さらに予想に反してラトビアは暑い日々が続き、これなら周りがより落ちてくる、ますますチャンスは大きくなるに違いないと楽観していたが、あいにくロング前日から涼しい気候が戻って来てしまった。勝負の行方を天に任せるようではいかんわな、と自分を戒めながらレースの支度をする。

その過程でふと村越さんの記録が気になった。2001年、フィンランドでのWOCでロング決勝に残った彼の写真を見て世界選手権とはどんな場所なのか憧れるきっかけとなった。タイム比や順位は目標設定の段階でも一度見ており、ああそうだったかと思い出すくらいだったが、「あれ?そういえばこの時の村越さんと年齢が近いのでは」ということに気づいた。僕が40、当時の彼が41歳。ここで勝てたら帰ってから威張れるぞと思う。

旧マップは公開されていたが、立入禁止エリアはそれより広く設定されており、ミドルでは予想外の場所を使ってきたりした。さらにこっちに来てから立入禁止エリアが追加され、既に追加されたエリアに入ってしまった選手がいるというので、レース前日に全選手が競技エリアの一部に入る機会があったりもした。奇をてらうコースの可能性もある。

そして迎えた当日、スタートエリアへ向かうと予想通り会場の北側からスタートするコースレイアウトになっていることが分かった。おそらく最初はフラットなエリアを使い、中盤以降、川沿いの急な斜面を切るか回るかを問うルートチョイス課題があるだろう。もしかしたら昨日見てきた場所を使うかもしれない。

女子を待ってからのスタートなので随分待ち時間があった。本を読んだりしながら過ごそうと思っていたが、あんまり集中して読むことができず、周りの選手やコーチの動きを観察していた。どの選手も緊張感があり、自分だけではないんだなと安心する。

いつも目(コンタクト)の防護のためグラスをかけるが、スタート直前で雨が降り出してきた。雨での不快さを考えるとグラスはかけない方がよい。ぎりぎりまで様子を見て、グラスをオフィシャルに渡しスタートレーンへ入る。

スタートに立つとTVカメラ。しかし今頃女子のレースが佳境なのできっと映っちゃいないだろうなと思いながら地図を取り、走り出す。マップ交換なし、ループもなさそうなのが意外だった。

△→1 短いが大きな地形的特徴がない。コンパスでまっすぐ。やや慎重なペースだったがうまくヒット。

1→2 大きな湿地切りの後、1番同様、地形的特徴のない場所へのアタック。ただし2の直前に細長い特徴的に描かれた沢①があるのでその先端からアタックすれば難しくはないだろう。湿地は昨日見た場所だった。岬の様に伸びる場所②が走りやすいことも見ていたので自信を持って進めた。アタックポイントの谷の直前まで順調に進んでいたが肝心の谷がまったく分からない浅い地形だった。歩測から明らかに行き過ぎていると思う。さぁ、どうする、と思ったときに目の前にヤブ③を認識し2の北東のそれだとわかりリロケート、再アタック。30秒くらいのロスがあった。

2→3→4
地形が明瞭な場所へのアタックが続く。3は簡単だった。4はその尾根の先端に出るようレッグ線左側をまっすぐ進むつもり(青)だったが道の出たところでヤブがきつく、回避するため右側へ迂回。これも30秒くらいは無駄にした。

4→5→6
5はいかにも見つけづらそうなところに置いてある。5の沢に確実に入れるようエイミングオフ。藪の湿地が進みづらくペースは上がらないが決して悪くない。

6は地形的特徴がない場所へのアタック。しかし前日テレインに入れた時に6のすぐ西のドーナツ状のオープンが遠めからもわかることを見ており、そこを目標に進み難なくヒット。後ろから来たロシアの選手と同時に取る。

6→7→8
7は湿地の中の切り開きに出るつもりだったがロシアの選手がまっすぐ行くので便乗する。湿地を渡り切ったところでリロケート。ロシアの選手は少しずれてるということもわかりルート補正して先行。

8はまるで日本のオリエンテーリングでありがちなレッグ。技術的な課題はなくロシア選手とほぼ一緒に到着。

8→9→10
9は予想した通りのロングレッグ。ここまで35分。距離的には1/4くらいだろうか。ただアップがほとんどないので実際は1/5強くらいか。いずれにしてもそんなに悪くないペースのはず。早めのジェル補給をしながらルートチョイスを検討。

まっすぐはなし。東を回るか西(緑)を回るか。距離を考えると東まわり。アタックは10の数字が書いてあるところ①から沢を数えながらアタック。そこまでは傾斜変換沿い②を走る、オープンに出るまでもチョイスがある。3番辺りを通るか大きく回る(水色)か。3番の周辺は分かっている。その後の登り返し③も少なくて済む、回るより早いだろうとルートを決定。ロシア選手の姿をかろうじて捕えらるくらいのタイミングで脱出。

オープンに出たところで前の選手の姿が消える。ルートが分かれたか、少し残念だったが追いつける可能性もあると思い前へ進む。ラトビアに来てから、登るか回るかを常に考えていた。登りはきついが日本の柔らかい地面に比べると登りやすい。回るのが必ずしも早いわけではない。緩い斜面を登れるなら登るのはありだと決めていたのでこのルートは悪くなかったと思う。

結局アタックポイントまでずっと一人旅だったがペースは悪くないだろう。アタックは気を付けようと慎重に進む。最初の尾根を登りまでは問題なし。ただその先の谷がかなり険しくヤブもあったためペースが上がらない。2つめの沢にコンタリングで入る。沢の中に岩がありそれを使ってリロケート。いよいよこの次の沢だ。同じくコンタリングで斜面を走る。谷が見えてくる。これだこれだと取り着く。が登っても何もない。コンパスを使うと南を向いている。なぜ南?もしかして全然違うところに入り込んでいた?いやそんなはずはない。少しパニックになりかける。とにかく現在地を確定させたい。もはや谷の中では自信が持てない。尾根の上が明るくなっている。なにか分かるだろうと登ってみる。農家が見える。それでもすぐにはどこにいるのか分からず、少し考えてようやく現在地を把握。なんだか分からんが反対側の斜面に入り込んでしまった。ただ、そのことにもすぐには自信を持てず、正しいと確信するまで時間がかかった。再アタックはまったく問題なし。

ミスのことは今は忘れようと気を取り直し10へ。問題はなかったがヤブの中、ミスの後ということもありだいぶ慎重になってしまった。ここまででちょうど60分。距離登り的にはちょうど半分くらいか。まだ可能性は残っているはず、とジェルを補給。

9はナビゲーション上の最大のミスであった。4分くらいのロスか。1つ手前の沢に入ってから油断してしまいコンパスを見なかったのが一番の原因だろう。しかしその後、谷底を切っているにも関わらずそれに気づけなかったことは今でもよく分からない。何を見ていたのか。いつまでたってもこういうミスがなくせないのは技術面というよりは心理面での問題だろうと思う。


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