田舎の生活その81

台風の9月。関西に大きな被害をもたらした21号。僕の住む川根本町では甚大な被害はなかったが、大井川の水位が上がり、夜通し水防出動となった。現在通過中の24号も待機命令が出ており消防団詰所にて待機中。何事もないことを祈りばかり。

さて先月書いた通り奨学金の返済が終わったのでそれに充てていた金額を将来の蓄えに回そうと思っていて、改めて今後の人生に掛かる費用を計算する今日この頃。しかし当然ながら長生きすればするほど必要なお金は多くなる。健康に過ごせるのはいいことだが、程よいところで往生できるのもまた幸せなのかも。こればかりは自分で決めれないのも困ったもの。

と、お金のことを考え始めるとだんだん気持ちが沈んでしまうので、そうなったときは目の前の仕事に一生懸命になろう、といつも思うことにしている。

この夏から我が家に新しい家族が加わった。まだまだいたずら盛りの男の子、ぴーた。


愛知県選手権

世界選手権以来のオリエンテーリング大会。お隣愛知県で開催された愛知県選手権にオープン参加。愛知県内のナンバーワンオリエンティアを決める大会だが11月に開催される全日本リレーオリエンテーリング大会の静岡県代表選手選考会にもなっており参加。

この一カ月すっかりさぼっておりだいぶ不安があった。EMITはレンタルだったのにマイカードを持って行ってしまうなど。

△-1-2-3
序盤はルートチョイスはなく基礎技術を問うレッグが続く。2番は直登してからアタックするなど地形図ナビゲーション的な動きをしてしまいレース勘の鈍さを感じる。

3-4
給水所を回るルートチョイスを読めず。ただまぁこのルートがもっとも早いだろう。

4-5
山越えルートも見えるが山の走りにくさを考慮し道を回る。若干ショートカットを考えるも(GPSログで道路上で赤くなっているところ)、結局全部道を回る。

5-6
尾根辿り、道周りも考えるが、距離・登りが少ないこのルートを選ぶ。プランナー想定のルートだったようだが切り開き部分が走りづらく、最後のエリアも走りやすい林ではなかったのでペースはあまり上がらず。結果的には下って登る全部道ルートが早かったようだ。

6-7
アタックでまっすぐ北に進んでいたつもりが斜面に流されたか右にずれる。急な斜面での方向維持に課題あり。

7-8-9-10-11-12
終盤も基礎技術を問うミドルディスタンス的なレッグ。最終コントロールからフィニッシュまでテープ誘導がないことを確認しておらず、油断して12番はいくらかオーバーランしてしまう。

結果的にはオープンクラスでトップを獲得。静岡県代表の権利は獲得したので3年ぶりに静岡県代表で走れるはず。目指すは優勝、と言いたいがメンバー発表はまだ少し先とのこと-- 静岡県選手団は追加募集中。静岡県出身の学生さんなどゆかりある方はぜひ9月中に田濃団長まで連絡を。

ところでローカル大会ながらnoname会場販売には多くの方にお立ち寄りいただき、またたくさんお買い上げいただいた。改めて御礼申し上げます。


エクストリームシリーズ奥大井大会

9/8に僕が住む川根本町で開催されたアドベンチャーレース、エクストリームシリーズ奥大井大会。毎年近所で開催されているレースでいつかは出てみたいなと思っていたが、毎年スケジュールが合わずなかなか出られなかった。主催者代表が他の仕事でお世話になっている方だと知り、僕が関わるイベントや講習会に来てくださる方も多く参加していることも知り、ますます出てみたいという気持ちを高めていたところ、今年はスケジュールが合いそうだ、となりオリエンテーリング現アジアチャンピオンの谷川さん(ボブ)を誘い参戦が実現。

2人での参加も可能だったが女子を入れた3人チームで出るのが正規チームの条件らしく、女子1名を締め切り直前まで募集。オリエンテーリング仲間で現在はMTB-O日本代表として活躍する加納さんが空いているという。超強力助っ人現る!ということでラブコール。3人での出場が叶った。

要綱によるとトレッキング(オリエンテーリング)、MTB、カヌー、チームチャレンジがあるという。トレッキング区間は問題ないだろう。MTBは女子の加納さんが一番速いくらいでは。実はボブもMTB-Oの代表選考会に出られるレベルらしく、僕が一番足を引っ張る可能性が高い。カヌーは3人ともほぼ初心者レベル、チームチャレンジは内容次第だが数字系や地元系なら強みあり。いずれにしてもカヌーが鬼門であろう。

メンバーが決まったのは10日前。練習はなし、この面子で何かしたこともほとんどない寄せ集めの急造チームだったが、役割分担や装備確認などできることは連絡し決めておいた。目標は無事に完走。大会前に台風や秋雨前線が停滞し、大会当日も雨の予報で迎えたレース当日。

会場には普段別のイベントで会う顔がたくさん。その顔を自分が住む町で見るというのは不思議な感じだが嬉しい気持ちも大きかった。そして予報通りの雨に加え、大井川増水でカヌーと渡渉がキャンセルになると知る。アドベンチャーレース感を満喫できないのは残念だったが、上位争いの目が出てきた気はした。

チーム紹介やブリーフィングのあと地図を受け取る。指示書はまだすべてもらっていないがトレッキング区間とMTB区間の予想は付く。通行止めになっている林道や道がないはずの場所に行くことになっている。この辺りの山は行けるところは大体行き尽くしたが、行ったことのない場所に行けるのが楽しみだった。そんなこんなでスタート。

スタート前

まずは会場でチームチャレンジ。お題はだるまさんが転んだ。焦っても意味はない。歩くペースで確実に歩を進め、第2グループの先頭くらいで通過。

最初のトレッキング区間はスコア・オリエンテーリング。トレッキングは僕と加納さんで先導・ペースメイクすることにしていた。渡渉ポイントがキャンセルになり、時計回りか反時計回りかという単純な選択になってしまったが、登る傾斜が緩い方がよいということで反時計回りを選択。いつも道路から眺めていた崖の上を通るのでどんなもんか楽しみだった。会場の脱出で河原沿い(緑)を行けるのか自信がなかったので確実なロードを選択し。どうやら河原沿いが正解だったらしく(帰りはそこを選択)、山に取り付くまでのロード区間で先頭と差がついていることを確認できた。一番強みのトレッキング区間で前に出ていないと厳しいなぁ、どこかで巻き返したい。ただ加納さんがランをしばらくやっていないというので、どこまで追い込んでよいか読めず、後半のスタミナを考えるとあまり飛ばすこともできない。ここはルートで差を詰めたい。半分以上のチームが先にトンネルをくぐるルート。これはチャンス。

最初の尾根登り。確実に行くなら主尾根を登るルート(青)だが、東に伸びる小さな尾根を登れそうなら登ろうと決め、実際に登れそうな斜面だったので選択。1つめのCPを獲る。男性ペアチームに追いつき、ミックスであることを考えるとだいぶよいペースだろうと思う。2つめのCPまではひたすら登り。例の崖の上を進み、やぶい尾根を登りゲット。お世話になっているアドベンチャーレーサーの2チームと一緒になる。1つは混合、1つは男子ペア。ここが先頭集団であろう。3つめのCPまではコンタリング大会。3チーム並走する。ほぼ同時にポイントを取るも僕らが一息ついている間に2チームは先に進んでしまい背中が見えない。この辺りはレース慣れの差が出たか。

あとは会場へ戻るロード区間だが、トンネルの入口部分をショートカット(水色)。ここで先頭に追い付く。しかし女子を牽引している相手はランペースが速く、じりじり差を付けられ2位でMTB区間へ。

MTB区間はボブと加納さんがペースメイク。僕が地元情報で後ろからフォロー。しかし雨で滑る路面。アスファルトの下りはなかなかスピードに乗れない。レンタルバイクの僕はサイズがどうも合っていないらしく登りも四苦八苦。案の定、2人の尻を追いかけるのがやっと。途中で転倒。ナビゲーション的には難しさはなく、寸又峡へ。

ここからは再びトレッキング+チームチャレンジ。チームチャレンジは300円ピッタリの買い物をせよ、という指示。さっそくなじみのせんべい屋さんへ行き300円ぴったりで買い物したいと聞き、クリア。あとはトレッキング。

講習会でいつも使う外森山に登りCP10をゲット。そこから尾根を北に下る。有名な夢の吊り橋の下流にかかる猿並橋のCP11へ。しかしより最短で行ける道があることを知らず少し無駄に登り返す。土地勘があるが故の弱点。吊り橋の下は濁流。僕は慣れたものだが他の2人はちょっと怖かったらしく1人ずつ慎重に渡ることに。だいぶ時間がかかってしまった。そこでの焦りもあってか次のCP12を見逃し、オーバーラン。さらにボブが地図を落としたと言う。ルール上「チームメンバーの誰かが必ず携帯するもの」になっているのでなくてもよいはず、と思ったが自信がないし、地図をゴミにしてしまうのも嫌なのでMTBに乗ってから探しに行く。運よく後続のチームが拾ってくれており大きなロスなく回収できた。MTBを回収した時点で4位に後退していることを知る。

カヌーがなくなったのであとはひたすらMTB区間。登りが続くことを知っているだけに苦行であったが兎辻まで登れば後は下り基調。が水と落石でガレた地面は恐ろしい。一時晴れていた空は再び雨に。ダムまで下りて、最終CPへ向けて再び登り返し。MTBを漕ぐ2人。僕は押して走ったほうが速かった。

ダムの上を通って登りを回避。これで1つ前のチームに追いつく。最終CPへのアタック。地図上は道路が繋がっているように分岐しているが、ここは立体交差で繋がっていないはず(下図、青丸)。ひょっとしてよく見ると繋がっていたのかな?という淡い期待もあったが、残念ながら僕の知っている通りの状態だった。道路で繋いでいくとだいぶ遠回りをしなくてはいけない。

しかしここで9年前に1度だけアドベンチャーレースに出た経験が活きた。「担いで降りよう」と伝え、「え?」という顔をする2人を置いて先に斜面を下って道路の下の林道へ。2人も渋々下りてくる。3位争いするチームも一緒だったが、縦列でないと降りられない斜面。これで差が付き、後はMTBで気持ちよく下って3着でのゴールとなった。

夜の表彰式、結局着順通り総合3位、ミックスで2位であることを知る。急造チームで入賞できたことは嬉しい限り。ただ水物があったらここまで行けなかっただろうな。上位2チームはOMM運営でお世話になっている方たちのチーム。こんな強い人たちに支えてもらっているんだと思うとますます心強くなった。何よりいつも1人で練習している山の中で仲間と一緒に競えたのがとても楽しい1日だった。


WOC2018 in Latvija ⑦ ロング後半とまとめ

コースは後半。ここまでとは打って変わってタフなレッグが続く。ここからがWOCロングの本番か。

10→11→12
やや長めのレッグが続く。ルートチョイスがありそうと思ったが、「あるのか?」という感じ。大回りになりすぎる。11-12は立入禁止エリアの左を巻く(青)チョイスがあったようだが(トップ選手のタイムはどちらもあまり変わらず)、僕の力量ならこのルート一択だっただろう。

ナビゲーションは問題がなかったが9番でのミスもあってか谷の中で慎重になりすぎている感覚はあった。この2レッグだけで30分。体力的にもきつくなってきており自分でもペースダウンを感じる。

12→13
リレーで見たことのある場所。当初はリレーのルートの逆回り(青)で進むつもりだったが、進み始めてリレーのルート分析を思い出し、南からのアタックに切り替えてしまう。であれば緑ルートでよかった。ルートミスで2分程度のロス。判断力の低下が見られる。

13→14→15
会場を通りもう1ループ。この時点で90分。残りの距離を考えると目標達成が厳しいことに気づく。周囲の応援が「残りもしっかり」的な雰囲気だったので「あまりよい結果ではないのか?」と思ったりする。

コーチングゾーンではコーラや電解質などを補給。1分以上のピットインとなってしまった。その間にモルドバの選手に抜かれる。

写真は公式サイトより photo by WOC2018

15もリレーで使ったようなエリア。先行する選手につられ行き過ぎてしまう。30秒のロス。ルートは悪くないと思っていたがよりまっすぐ進んだ方(青)が早くて簡単であったが読めず。

15→16→17
16は細かな部分でルートチョイスをしなくてはいけなかったのだろうが、そこまで考えられず。ペースを維持するのがやっとの状態であった。

17は真っすぐ(緑)かまわるか。藪の湿地は厳しいことからオープンを回るルートを選択。南周りのルート(青)はまったく見えず。

17→18→19
ルートチョイスはあまりなかったがルートがふらつき始め、何度も軌道修正を求められる。体力が削られ判断力が低下する中で、技術に対する自信を揺さぶってくる。まさにKing of Orienteeringを決めるレースなのだと実感する。19で最後のジェル補給。2時間手前。135分は厳しい。が荒れた展開なら順位のチャンスはまだあるはず?

19→20
ジェルを取りながらルートチョイス検討。左回り(緑)、右回り(青)を考える。左回りの細い尾根①は過去地図ではあまり行きたい感じの場所ではなく、無意識的にルートから外してしまい西周りを選ぶ。11番の北の斜面②を登っているときに「しまった、左の尾根行けるじゃん、そしてアタックも楽ではないか」と気づく。登りのペース低下を考えるとここからでもルート変更はありではないかと思い、実際のルートへ変更。

結果的には最初から東周りを選択するのが正解だっただろう。過去地図に囚われすぎた失敗であった。さらにトップは僕が登った②からまっすぐルート(水色)と知る。確かに距離は短く登りは僕のルートと変わらない。頭に十分血が回らない中で細かなルート検討を要求してくる。

20→21→22
21はつなぎのレッグ?22はわざわざ崖の下だけ立入禁止エリアを抜いているので通れるだろうと選択。しかしトップ選手は崖の上の斜面上を豪快にコンタリング。集中力もいるルート。力の差を感じる。

22→23→24→◎
リレーの最終パートと似たような課題。23は「また登らせるの?今回はちゃんと登ろう」とあっさりルートを決める。しかしトップ選手はヤブの谷の中をガンガン進むルートであった。

24、これまっすぐ行く人行くかね?と思いながらリレーの時と同じルートを選択。しかし優勝したオラフは当たり前にまっすぐであった。恐るべし。

◎いよいよフィニッシュ。リレーの時は流し気味だったフィニッシュレーンを全力で駆け抜ける。意外と走れるな。もっと途中を追い込めたのでは?と思いつつフィニッシュラインを切る。雨が強くなり始めていた。

結果は下表の通り。順位もタイム比も目標に届かなかったし、過去の他人や自分の結果と比較してもあまりよい方だとは言い難い。ロスを削れたと考えたとしてもどんなによくても最大7-8分くらいの短縮で、それでも145%55位前後で目標には及ばない。まったく力不足だったというのが残念だが正直なところなのだろう。

体力面の不足、ルートの揺らぎや細かなロスが多いなど技術が足りていない部分が多かったと感じる。さらにラトビアでのルート研究の積み重ねやこのレベルのコースへの経験が不足していることも大きな要素を占めるだろう。ただ現状で出来ることをしっかり発揮できたことは一定の満足感を与えてくれているし、足りないと分かっていることがそのまま結果になっているなと冷静に受け止めている自分もいる。

望む結果を出すためにやらなければならないことは分かっているが、そこまでコミットできるのかどうかというのが今の僕にとって最大の課題だろう。世界選手権に出ることだけを目標にすることにはもはや意義を感じられない(だったらもっと若い人に行ってほしい)。世界選手権で結果を残せるアプローチができるかどうかを真剣に検討し、それが実行でき、成果を出せれば、再びこの舞台を目標に定めたい。

ところでリレーでもそうだったがコーチングゾーンは意外と重要であると感じた。ロングの場合、特に今回の様に残りの距離がまだある段階で通過するのであればそこでの雰囲気は選手のメンタルに影響するように思う。結果が良い悪いに限らず「いいぞいいぞ、いけるぞー」といったcheerがもっと欲しい。長いレース、観客側はその時点である程度結果が分かってしまっているが、選手は自分の状況はまったく分からない。良いのかもしれないし悪いのかもしれないという不安の中で走っている。よい雰囲気を得られれば残りのパフォーマンスをより高いレベルで保てるだろう。これは来年誰が走るにしてもそうなるようにお願いしておこう。

日本チームとしては日々のトレーニングの改善はもちろんだが、やはり何より海外テレインでの経験、国際レベルのレース経験が減少している点をなんとかしないことには浮上はありえないだろう。この1年のうち1/12をラトビアで過ごしたという寺垣内選手のリレーでのパフォーマンスがそれを証明していると思う。ワールドカップやトレーニングキャンプへの遠征を個人レベルではなくチームレベルで行えるだけの人材(選手、スタッフ)・資金を集められるかどうか、そのあたりをいい加減見直さなくてはいけないだろうし、来年からフォーマットが変わることは動機づけを高めるチャンスなのではないかと思う。チームとしてターゲットとなる大会(年)をもっと明確・明瞭に設定するのはありではないかと思う。


WOC2018 in Latvija ⑥ ロング前半

世界選手権最終レース、ロングディスタンス。僕にとってはようやく個人戦。既にリレーでレース感覚を得ることができたので、大きな緊張はなく、レースに臨めた。

何度も書いているが僕にとっては初めての個人決勝の舞台。想うことはたくさんあったが、感情的感傷的にならずになるべく冷静にレースを迎えるようにしようと努めた。特に目標設定は慎重だった。出る種目がロングかミドルか決まる前は、かつての予選通過順位に相当する45位以内を目標の1つにしてみたが、やや厳しいハードルかもしれない。種目がロングに決まった後、現実的な目標を再設定した。

2014年、現在のフォーマットになった最初の年に今回のチームメイトでもある結城克哉選手がロングで記録した50位。結局これが現フォーマットの日本男子最高順位となっているが、これが順位目標としてはよい設定に思えた。ここ4大会ではテレインにより差はあるが、トップ比で135%以内を出せば50位以内は確実となる。今回のウイニングは100分なので135分で走ればよい。

今回のコースは15.5km、600mと発表されていた。果たして自分はどのくらいで走れるのだろうか。目安になったのは6月の東大大会と全日本。どちらも登距離約4%のコースでWOCと同程度、前者は11.8kmを1:28:20(キロ7′30弱)、後者は13.7kmで1:58:09(キロ8’30強)。途中でミスをし失速もした全日本のペースでも135分は現実的な数字であり、十分に目標を達成できるはず。ただ全日本で失速したような失敗を繰り返していてはいけない。距離に対してペース作りや補給の計画を練った。それほど暑くないだろうと思っていたが、痙攣対策に電解質補給もできるようサプリやドリンクも日本から持参した。

ラトビアに来てから公開された情報でコースが16100m、登り640mに変更され、ややタフさが増した。タフさが増したほうが荒れる展開になりうるのでチャンスはあると思った。さらに予想に反してラトビアは暑い日々が続き、これなら周りがより落ちてくる、ますますチャンスは大きくなるに違いないと楽観していたが、あいにくロング前日から涼しい気候が戻って来てしまった。勝負の行方を天に任せるようではいかんわな、と自分を戒めながらレースの支度をする。

その過程でふと村越さんの記録が気になった。2001年、フィンランドでのWOCでロング決勝に残った彼の写真を見て世界選手権とはどんな場所なのか憧れるきっかけとなった。タイム比や順位は目標設定の段階でも一度見ており、ああそうだったかと思い出すくらいだったが、「あれ?そういえばこの時の村越さんと年齢が近いのでは」ということに気づいた。僕が40、当時の彼が41歳。ここで勝てたら帰ってから威張れるぞと思う。

旧マップは公開されていたが、立入禁止エリアはそれより広く設定されており、ミドルでは予想外の場所を使ってきたりした。さらにこっちに来てから立入禁止エリアが追加され、既に追加されたエリアに入ってしまった選手がいるというので、レース前日に全選手が競技エリアの一部に入る機会があったりもした。奇をてらうコースの可能性もある。

そして迎えた当日、スタートエリアへ向かうと予想通り会場の北側からスタートするコースレイアウトになっていることが分かった。おそらく最初はフラットなエリアを使い、中盤以降、川沿いの急な斜面を切るか回るかを問うルートチョイス課題があるだろう。もしかしたら昨日見てきた場所を使うかもしれない。

女子を待ってからのスタートなので随分待ち時間があった。本を読んだりしながら過ごそうと思っていたが、あんまり集中して読むことができず、周りの選手やコーチの動きを観察していた。どの選手も緊張感があり、自分だけではないんだなと安心する。

いつも目(コンタクト)の防護のためグラスをかけるが、スタート直前で雨が降り出してきた。雨での不快さを考えるとグラスはかけない方がよい。ぎりぎりまで様子を見て、グラスをオフィシャルに渡しスタートレーンへ入る。

スタートに立つとTVカメラ。しかし今頃女子のレースが佳境なのできっと映っちゃいないだろうなと思いながら地図を取り、走り出す。マップ交換なし、ループもなさそうなのが意外だった。

△→1 短いが大きな地形的特徴がない。コンパスでまっすぐ。やや慎重なペースだったがうまくヒット。

1→2 大きな湿地切りの後、1番同様、地形的特徴のない場所へのアタック。ただし2の直前に細長い特徴的に描かれた沢①があるのでその先端からアタックすれば難しくはないだろう。湿地は昨日見た場所だった。岬の様に伸びる場所②が走りやすいことも見ていたので自信を持って進めた。アタックポイントの谷の直前まで順調に進んでいたが肝心の谷がまったく分からない浅い地形だった。歩測から明らかに行き過ぎていると思う。さぁ、どうする、と思ったときに目の前にヤブ③を認識し2の北東のそれだとわかりリロケート、再アタック。30秒くらいのロスがあった。

2→3→4
地形が明瞭な場所へのアタックが続く。3は簡単だった。4はその尾根の先端に出るようレッグ線左側をまっすぐ進むつもり(青)だったが道の出たところでヤブがきつく、回避するため右側へ迂回。これも30秒くらいは無駄にした。

4→5→6
5はいかにも見つけづらそうなところに置いてある。5の沢に確実に入れるようエイミングオフ。藪の湿地が進みづらくペースは上がらないが決して悪くない。

6は地形的特徴がない場所へのアタック。しかし前日テレインに入れた時に6のすぐ西のドーナツ状のオープンが遠めからもわかることを見ており、そこを目標に進み難なくヒット。後ろから来たロシアの選手と同時に取る。

6→7→8
7は湿地の中の切り開きに出るつもりだったがロシアの選手がまっすぐ行くので便乗する。湿地を渡り切ったところでリロケート。ロシアの選手は少しずれてるということもわかりルート補正して先行。

8はまるで日本のオリエンテーリングでありがちなレッグ。技術的な課題はなくロシア選手とほぼ一緒に到着。

8→9→10
9は予想した通りのロングレッグ。ここまで35分。距離的には1/4くらいだろうか。ただアップがほとんどないので実際は1/5強くらいか。いずれにしてもそんなに悪くないペースのはず。早めのジェル補給をしながらルートチョイスを検討。

まっすぐはなし。東を回るか西(緑)を回るか。距離を考えると東まわり。アタックは10の数字が書いてあるところ①から沢を数えながらアタック。そこまでは傾斜変換沿い②を走る、オープンに出るまでもチョイスがある。3番辺りを通るか大きく回る(水色)か。3番の周辺は分かっている。その後の登り返し③も少なくて済む、回るより早いだろうとルートを決定。ロシア選手の姿をかろうじて捕えらるくらいのタイミングで脱出。

オープンに出たところで前の選手の姿が消える。ルートが分かれたか、少し残念だったが追いつける可能性もあると思い前へ進む。ラトビアに来てから、登るか回るかを常に考えていた。登りはきついが日本の柔らかい地面に比べると登りやすい。回るのが必ずしも早いわけではない。緩い斜面を登れるなら登るのはありだと決めていたのでこのルートは悪くなかったと思う。

結局アタックポイントまでずっと一人旅だったがペースは悪くないだろう。アタックは気を付けようと慎重に進む。最初の尾根を登りまでは問題なし。ただその先の谷がかなり険しくヤブもあったためペースが上がらない。2つめの沢にコンタリングで入る。沢の中に岩がありそれを使ってリロケート。いよいよこの次の沢だ。同じくコンタリングで斜面を走る。谷が見えてくる。これだこれだと取り着く。が登っても何もない。コンパスを使うと南を向いている。なぜ南?もしかして全然違うところに入り込んでいた?いやそんなはずはない。少しパニックになりかける。とにかく現在地を確定させたい。もはや谷の中では自信が持てない。尾根の上が明るくなっている。なにか分かるだろうと登ってみる。農家が見える。それでもすぐにはどこにいるのか分からず、少し考えてようやく現在地を把握。なんだか分からんが反対側の斜面に入り込んでしまった。ただ、そのことにもすぐには自信を持てず、正しいと確信するまで時間がかかった。再アタックはまったく問題なし。

ミスのことは今は忘れようと気を取り直し10へ。問題はなかったがヤブの中、ミスの後ということもありだいぶ慎重になってしまった。ここまででちょうど60分。距離登り的にはちょうど半分くらいか。まだ可能性は残っているはず、とジェルを補給。

9はナビゲーション上の最大のミスであった。4分くらいのロスか。1つ手前の沢に入ってから油断してしまいコンパスを見なかったのが一番の原因だろう。しかしその後、谷底を切っているにも関わらずそれに気づけなかったことは今でもよく分からない。何を見ていたのか。いつまでたってもこういうミスがなくせないのは技術面というよりは心理面での問題だろうと思う。